激闘の末、大会史上初の2試合再試合が決定した。「機動破壊」を掲げる高崎健康福祉大高崎(群馬)は、1点を追う9回2死二、三塁で重盗を成功させて追い付いた。福井工大福井も譲らず、規定により延長15回7-7で引き分けた。福岡大大濠・三浦銀二投手(3年)は15回を投げ、滋賀学園と1-1で引き分けた。1大会で2試合の延長引き分け再試合が行われるのは春夏を通じて初。再試合はともに28日に行われる。

 「よしっ」と一瞬思わせ、相手ナインに「しまった」と頭を抱えさせた。高崎健康福祉大高崎は1点を追う9回2死二、三塁、鮮やかな重盗を完成させた。二塁走者の安里が「けん制をもらうように」大きめのリード。投手・摺石がけん制した瞬間に、三塁走者の小野寺がホームに頭から飛び込んだ。サインを出した青柳博文監督(44)が「ギャンブルです。バッターの2球(の振り)を見て、あれしかないと思った」と言うトリックプレーで同点に追いついた。

 準備と勇気が詰まった「機動破壊」の応用編だった。成功のカギは、直前の随所に隠されていた。大きめのリードを取った安里に対し、遊撃手の西村が二塁に入ったが、投手は投球した。安里は「危なかった」“フリ”でけん制への意欲を駆り立てた。3球目の直前、三塁ベースコーチの指示を聞く“フリ”をしながら「わざとらしくないように」リードを広げた。投手が二塁にターンした瞬間、勝負は決した。

 12年春の関東大会・東海大甲府(山梨)戦でも、威力を発揮した。同点の9回2死二、三塁、全く同じシチュエーションで勝ち越し点を奪った。青柳監督は「いつもやっていること」と言ったが、条件は2死であるとともに、走者の走力、技術も加味される。50メートル走は小野寺が5秒9で、安里が6秒1。方程式は完璧だった。

 雨中の3時間44分の激闘に、青柳監督は「負けてもおかしくない試合。いい経験」と話した。延長15回には三塁打を打たれ、三塁への送球がそれたが、左翼の小野寺が後方でカバー。“暴投トリック”で飛び出した走者を挟み、勝ち越しを阻止した。2つのトリックプレーが引き分けを引き寄せた。【久保賢吾】