清宮よ、佑ちゃんになれ。高校通算79本塁打の清宮幸太郎内野手(3年)を擁する早実(東京)が、東海大福岡に8-11で敗れた。清宮は幸運な三塁打と二塁打を放ったが1歩届かず。06年センバツで敗れ、夏に全国制覇した斎藤佑樹の代の再現を目指し、仕切り直す。

 ミラクルの再現はならなかった。6点を追う9回、先頭で遊飛に倒れた清宮は仲間の反撃を見ながら、9回に追いつき、延長10回に勝ち越した明徳義塾戦が頭をよぎった。2死満塁、石井に代打を送って、投手を使いきる奥の手で3点を奪った。「回ってこいと思った」。なおも2死二塁。9番・野田が一ゴロに倒れ、人生最初で最後のセンバツが終わりを告げた。

 清宮 悔しい、むちゃくちゃ悔しいです。もう少し、長くやるはずだった。

 東海大福岡・安田の攻略に苦しんだ。直球、スライダー、シンカーを四隅に集められ、サイドから浮き上がるような軌道に戸惑った。6回は右中間に高々と打ち上げた。「最初は落下点にいたけど急に伸びた。あんな高い打球は初めて。風船みたいだった」と右翼手の前原を仰天させ、ポトリと落ちる三塁打としたが、「打ち取られたのも同然」とバッサリ。3得点の口火を切った8回の右翼線二塁打も「打ち損じた」と反省の連続だった。

 大会前に「みなさんにとって、忘れられない春になる」と宣言した。あと1本に迫った通算80号を聖地・甲子園で実現する青写真を描いたものの、春の甲子園からは夏への試練を与えられた。1回戦で勝った明徳義塾の馬淵史郎監督(61)に「早実には野球の神様がついとる」と言わしめたが、通算9打数3安打で本塁打、打点はゼロ。「ふがいない結果」と唇をかんだ。

 和泉実監督(55)は、06年夏に斎藤佑樹(日本ハム)を大黒柱に制した再現を期待した。「斎藤だって、春はダメだったが、経験を夏に生かした。この経験を生かしてほしい」と話した。清宮も「この負けを無駄にするわけにはいきません」と言った。「あとは夏しかない。夏にかける」。清宮の夏が、この日の敗戦から始まる。【久保賢吾】