コールド負け寸前から大逆転劇が起きた。清水桜が丘が、終盤の猛攻で13-12で昨夏甲子園出場の常葉大菊川を退けた。7点差の7回裏、0点で抑えられると試合終了だったが一挙8点を獲得。8回表に再逆転されるも同裏に追いつき、9回裏にサヨナラ勝ちした。サッカーの名門と知られる同校だが野球部も奮闘。8強入りを果たし、初めて夏のシード権を獲得した。

 ミラクルの連続だった。9回裏、清水桜が丘の1死二、三塁。鈴木大雅(3年)が3球目、快音を響かせた打球が、三遊間を抜けて勝負は決した。「自分が決めるつもりで打席に立ちました。負ければシード権をもらえないので、ここで勝ててうれしいです」と鈴木大。両チーム合わせて33安打の乱打戦を制し、会心の笑顔を見せた。

 7回裏には7点差をひっくり返した。2-9。無得点に終わればコールド負けが決まる場面で、相手はエースの漢人友人(2年)を降板させ、左腕の榛村大吾(2年)をマウンドに立たせた。途端に打線に火が付いた。「今年は(県内に)左腕が多いので左対策はしていた」と話す鈴木大が、1死満塁で3点適時二塁打を放つなど打者11人で5安打8得点。一気に逆転した。5安打の羽山翼(3年)は胸を張って言った。「菊川は勝利を確信していたでしょうが、そこにスキが生まれると思いました」。

 悔しさがバネになった。昨秋は県大会に出場したが、1勝もできなかった。中部地区準決勝では静岡に5-9。県内上位校と体格差を痛感し、食トレを始めた。冬季練習中は毎日、マネジャーが米15合を2度炊いて、練習中と練習後におにぎり1個を間食するなどした。効果は抜群でチーム平均体重は7キロ増。打球の勢いが増し、内野を抜く安打が多くなった。

 清水桜が丘は2013年に清水商と庵原が統合して開校。統合前の清水商が春夏合わせ3度、甲子園に出場しているが、全国に名がとどろくサッカー部に比べると影が薄かった。一方で、同校では伝統的に他の部活を応援し合う校風が築かれてきた。羽山は前日29日にプリンスリーグ東海の藤枝東戦で決勝ゴールを決めた平野琢馬(3年)と仲が良く、28日には互いに活躍を誓い合ったという。羽山は「どの部活も応援し合うのがうちの良さ。力にもなる。優勝よりも1つずつ勝つことに集中したい」と、準々決勝の静岡戦へ気持ちを高めた。【大野祥一】

 ◆清水桜が丘 13年、清水商と庵原が統合して開校。野球部は清水商で68年、63年にセンバツに、86年には夏の甲子園に出場した。サッカー部は清水商時代に全国大会12度優勝。バレーボール部、ハンドボール部も強豪として知られる。