米国仕込みの17歳が日本野球の魂を体現する。第90回選抜高校野球(23日開幕、甲子園)に出場する駒大苫小牧(北海道)が21日、「野球」名付けの親、中馬庚(ちゅうま・かのえ)の命日に合わせ、大阪府豊中市内で墓参りをした。米シカゴ育ちの道原慧(さとる=3年)は、礼節を重んじる日本野球を広めた偉人に感謝。24日の静岡戦は、全員で戦う日本野球の神髄を、プレーで示すことを誓った。

 「ベースボール」育ちの道原が「野球」名付けの親に全力プレーを誓った。大阪・豊中市の圓満寺にある墓石をじっと見つめ、静かに手を合わせた。「中馬庚さんのことは、今日初めて知りました。あこがれていた日本の野球を広めてくれた人と知り、気が引き締まった。試合でも、その精神に恥じないプレーをしたい」。日本野球への敬意があふれ出た。

 千葉県船橋市出身。父の仕事の都合で、小6になる直前の3月に米国シカゴに移り住んだ。そこで、大きな出会いがあった。野球教室で当時ホワイトソックスに在籍していた福留孝介に指導を受けた。「アメリカ人より小さくてもメジャーで活躍していた。練習への細かいこだわりとかも聞いていて、土台に高校野球があることを知った。何とかして自分もそこで心と技術を磨きたいと思った」。意を決し中3の夏、家族と離れ単身帰国した。

 親同士が知り合いだった仙台市の佐藤大善投手(3年)の家にホームステイ。動画で見ていた全盛期の駒大苫小牧にあこがれ、佐藤とともに、今度は北海道に渡った。「アメリカの野球は個人の対決。声を出し互いに励ますことも少なかった。みんなが声を出し合い助け合って戦う今の野球が一番楽しい」。長所を集め、短所を補い合う野球にほれ、練習にのめり込んだ。

 好きで飛び込んだ世界だからこそ、めげなかった。打撃不振で昨秋の全道、明治神宮大会は先発から外れた。12月には右足首を骨折。離脱中は1日1000~2000本、バットを振り込んで、上半身の強化に費やした。

 本来外野手も、復帰した2月から一塁手に挑戦。滋賀合宿の対外試合で計13打数8安打、チームトップの打率6割1分5厘と好調で、24日静岡戦の先発が濃厚だ。「礼節を重んじる日本球道の良さを表現したい」。必死で夢を追いたどりついた聖地に心技体、学んできたすべてを注ぎ込む。【永野高輔】