第96回全国高校野球選手権(甲子園、8月9日開幕)の各地区大会が、今週末から本格化する。日刊スポーツでは、一世を風靡(ふうび)した元プロのDNAを受け継ぐ主な球児たちをリストアップした。

 流通経大柏(千葉)の諸積怜外野手(3年)は元ロッテ外野手の兼司氏(45=ロッテスカウト)を父に持ち、右投げ左打ち、俊足の中堅手というスタイルは父譲りだ。イチローに匹敵する一塁到達タイムで、父も踏んだ甲子園出場を夢見る。

 マリンに8年ぶりの「モロ」コールが湧き起こるかもしれない。流通経大柏の諸積は不動のリードオフマン。兼司氏も「足と肩は俺よりいい」と認めるほど。春の県大会(専大松戸戦)を視察したロッテスカウトの計測では、一塁到達タイム3秒87をたたき出した。プロでも4秒を切ると俊足とされ、3秒7~8台のイチロー(40=ヤンキース)にも引けを取らないいだてんぶりだ。諸積は「自分より速い選手は見たことがない」と、盗塁成功率9割を超えるスピードで打線を引っ張る。

 野球を始めたきっかけは「父の笑顔」だ。「野球をしている時はいつも楽しそうだった」。小4でサッカーから野球に転向。手始めに、父のトレードマークであるヘッドスライディングを練習した。外野守備では、「父の中で一番好きなプレー」というダイビングキャッチでグラウンドを駆け回った。小学生のころは、父も暇を見つけて打撃や守備をコーチした。

 忘れられない思い出がある。野球を始めて間もない06年9月24日、紙吹雪で千葉(現QVC)マリンが真っ白に染まった父の引退式だ。グラウンドで花束を渡し、抱きついて号泣した。大好きだった父のプレーが見られなくなることが悲しかった。「いつか、ここで同じようなプレーができたら」。幼心に強く誓った。

 あれから8年。大会前に母史子さん(44)から懇願された。「もう1度、マリンで『センター諸積』を見せて。父さんも口には出さないけど、願っているはずよ」。準決勝以降はすべてマリン開催。父、母の願いをかなえ、同じ舞台に立つため、最後の夏を全力で駆け抜ける。【千葉担当・加藤雅敏】

 ◆諸積怜(もろずみ・れん)1996年(平8)8月20日生まれ。東京都出身。小4の時、十八軒アトムズで野球を始める。流通経大柏では、昨秋からレギュラー。名前の由来は、父を1軍に昇格させてくれたレン・サカタ元ロッテ2軍監督から。右投げ左打ちの外野手。50メートル5秒8。178センチ、74キロ。家族は父と母。