プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月23日付紙面を振り返ります。2007年の1面(東京版)では、レッドソックス松坂の「ぺろぺろ投球」を報じています。

<オープン戦:レッドソックス7-3パイレーツ>◇2007年3月21日(日本時間22日)◇米フロリダ州ブラデントン

 レッドソックス松坂大輔投手(26)が5度目の先発となるパイレーツ戦で5回2/3を1安打1失点7奪三振と「怪物」の能力を存分に披露した。渡米後最速の96マイル(約154キロ)も計測。この日はスポーツ専門局「ESPN」が中継し、松坂にとって初の全米デビュー登板だった。だがそんな視線を気にも掛けず、口元に指を付けるしぐさを球審に注意されても笑顔で謝るなど、大胆不敵な一面ものぞかせた。

 登板を終えた松坂を、敵地ファンがスタンディングオベーションで見送った。「日本ではあまりないことで、うれしかったですけど少し照れくさかったです。どうやって応えていいのか分からなかったです」。ストライクのコールのたびにどよめき、三振を奪うたびに拍手。敵地の空気を本拠地のように変えてしまうほど、松坂の与えたインパクトは強烈だった。

 2点を先制した直後の1回裏、死球と2つの内野ゴロで2死三塁。ここで4番ラローシュに甘いチェンジアップを中前へ落とされ、1点を失った。「点を取ってもらったあとに点を取られるのは1番悪い。シーズンではなくしたいです」。試合後は、反省の言葉が口をついて出た。だが終わってみれば、被安打はこの1本。「悪いなりに投げられたと思います」。打者20人に1安打2四死球。許した走者も3人だけ。「シュート回転していた」と振り返った速球も、最速154キロをマークするなど、肩の仕上がりは着実にステップを踏んでいた。

 その一方で、今しかできない「テスト」もちゃっかりと済ませていた。

 日本でイニング間に習慣化しているベンチ前でのキャッチボールが、メジャーではプレーを妨げる可能性があるという理由で禁止。だが松坂にすれば、マウンドへ向かう前に少しでも肩を慣らしておきたかった。味方の攻撃中には、ベンチ内で屈伸運動を繰り返し、攻守交代時は細かく足を動かしてランニング。さらに、マウンド脇で素早く5球ほど強めにキャッチボールを済ませたうえで、規定の投球練習を行った。

 球審からの忠告も、予想の範囲内だった。4回裏、パ軍の抗議を機に、球審から「マウンド上では手をなめないように」と注意された。ただ松坂自身、昨春WBCの際、指を口元につけたロッテ清水が無条件で「ボール」を宣告された事実は承知の上。それでも汗をふいたり、手をなめるシーンは1回から何度もみられた。「すいません。以後気を付けます」。ナーバスになるどころか、笑顔でペコリ。すべては公式戦への予行演習だった。

 次回は26日のレッズ戦。「とにかく開幕へ向けていい方向に持っていきたいですね」。154キロ、7奪三振の数字以上に、松坂の大物ぶりと頼もしさを感じさせる登板だった。

 ◆つば付け投球 大リーグでは20年に「スピットボール」と呼ばれる不正投球が正式に禁止された。そのため明確な違反行為は審判も見逃さず、マウンド上で手を口に当てると即座にボールがカウントされることもある。ただし現実にはある程度まで容認されていて、レンジャーズ大塚は昨年2月「(米国では)ボールが滑ると言われているけど、試合では汗をかくし、汗をつけて投げればいい。つばもマウンドを降りれば大丈夫」と話している。

※記録、年齢など表記は当時のもの