9回表にレッドソックス・ジョン・ファレル監督(55)の三男で、レッズのルーク・ファレル投手(26)がマウンドに上がった。

 相手ベンチから父親が見つめる中、ファレル投手は1死から2四球を与えたものの、続くベニンテンディを一直に、モアランドを中飛に打ち取って、無失点でしのいだ。

 その瞬間、父ファレル監督は帽子のつばに手を当て、息子の無失点をさりげなく祝福した。

 大リーグの記録を扱うエライアス・スポーツ・ビューロー社によると、大リーグの試合で投手が、父親が率いるチームと対戦するのは史上初。野手も含めると、04年にカブスのモイゼス・アルー外野手が、父フェリペ・アルー監督の率いるジャイアンツと戦った時以来の親子対決となる。

 ESPN電子版によると、ファレル監督は「ちょっと夢のような、そして、とても誇らしい気分だ。ダッグアウトのネット越しに息子の姿を見ながら、リトルリーグや高校時代…いろいろなステージで彼を見てきたことを考えていた。それが大リーグで実現するなんて。特別な日で、特別なイニングになった」と感慨深げに話したという。

 ファレル投手の大リーグへの道のりは、簡単なものではなかった。09年のノースウエスタン大入学前にのどの上部、頸(けい)動脈近くにゴルフボール大の良性の腫瘍が見つかり、摘出手術を受けた。

 だが11年に腫瘍が再発し、再手術。この時は放射線治療も行ったため、ひどい倦怠(けんたい)感に襲われた。クビの感覚はまひし、2カ月ほど会話もできなくなった。体重は12キロ近くも落ちた。

 野球人生の終わりも覚悟したが、グラウンドに戻ることを決意。大学4年時までにはビッグ10カンファレンスの防御率、奪三振で2位となり、13年ドラフトでロイヤルズから6巡目(全体174位)指名を受けた。今年7月にロ軍から戦力外通告を受けると、ドジャースへのトレードを経て、8月にレッズへ移籍した。

 父親との対戦について「確かに少し緊張した。同じフィールドに立つのは初めてだったから。チームのために良い投球がしたいと思うのは当たり前だけど、父が見ていたら、もっとうまくやろうとしてしまうものだから。でもイニングが始まったら、自分の仕事に集中したよ」と話したファレル投手。地元メディアから「ここシンシナティで親子ディナーをともにするのかい?」という質問を受けると「父がおごってくれると良いけど」と笑って答えたという。