悲願のバトンを必死に守り、託した。日本ハム有原航平投手(22)がプロ入り初めて、無失点で5勝目をつかんだ。7回0封。毎回走者を背負った。ボール先行の不利なカウントからも、強気に攻めてゴロを打たせた。打線の大量援護を受け、プロ最多126球の粘投。「少し自分の中で自信になった。次につながると思う」。控えめに、静かに。誇らしい自らをたたえた。

 背信から、はい上がった。3日楽天戦。完投まで、あと2死で1点差に迫られ降板した。白星はついたが、ドラフトで指名された直後から目標に掲げていた「先発完投」には、届かなかった。大学野球の名門・早大で培った投球術もプロでは生かせずにいた。続く11日西武戦はプロ最短2回KO。21日楽天戦は4敗目を喫した。2戦連続で計8失点。プロの洗礼を浴び、白星に飢え続けた。

 周囲の声に引き出され、新たな姿を見いだした。最速156キロが持ち味の直球も、球速より制球を強く意識。捕手市川からは「緩急をもっと使ったほうが良いと思う」とアドバイスを受け、先発陣の先輩浦野からはフォークを伝授してもらった。緩急を使った投球に意識を置いた。この日は女房役の大野を筆頭に、野手陣に助けられ手にした白星。「投げやすい環境だった。次回はもっと長い回を投げたい」。仲間に導かれ、たどりついた勝利に感謝と決意を誓った。

 先輩の背中が見えた。ドラフト1位ルーキーの5勝以上は、11年に6勝した早大の先輩・斎藤以来。栗山監督は「有原がローテでいけるというのは本当に大きい」とルーキーの働きに感謝した。有原は、使命感を強くした。「危機感というのは、いつも持っている。今日、こういう形で勝てて良かった」。真夏の夜空の下。貫禄を帯びた、たくましい姿がひときわ輝いた。【田中彩友美】