不安を吹き飛ばした。西武ドラフト1位の多和田真三郎投手(22=富士大)が25日、西武第2で右肩を痛めた昨年5月以来初めてブルペンに入り、捕手を立たせた状態で23球を投じた。渡辺シニアディレクターらが見守る中、下半身が低く沈み込むフォームから伸びのある直球を披露。大学時代に最速152キロをマークした素材の良さを見せつけた。

 柔らかいフォームで腰がグッと沈み込む。球持ちもよく打者に近い位置でリリースされた伸びのある直球が、藤沢捕手のミットに吸い込まれていく。それでも「指にかかっていなかった」と言う。五分の力で直球だけ23球。傾斜のあるマウンドから投げられたことが最大の収穫だった。「無事に終えたという感じ。ケガの前と同じに投げられ順調に来ています」と、安堵(あんど)した。

 昨春のリーグ戦中に右肩を痛めた。その後は6月の大学選手権も秋の北東北大学リーグも投げなかつた。ブルペンで捕手に対して投げたのは、実に8カ月ぶりだ。「久しぶりに投げられたので安心した」と笑顔を見せた。

 周囲は驚きに包まれた。受けた藤沢捕手は「涌井さんを初めて受けた時みたいな怖さがあった。急に伸びてくるんです。ポンと上がる感じ。1、2球差し込まれました」と強烈なインパクトを受けた。横で投げていた高橋光も「軽く投げて伸びている。今後のことを考え不安になりました」と、圧倒された様子だった。

 首脳陣は笑いがこぼれる。渡辺SDが「投げ方がいいから力を入れなくても球筋がいい」と言えば、鈴木本部長は「やっぱり今年の新人で一番いい。球児(藤川)のいいときに似ている。ビュンと来る」。故障後投げていないリスクを押した指名に、間違いはなかったと再確認した。潮崎ヘッドは「無理をしてほしくない。後半戦でも十分」と、慎重に調整を進めたい意向だ。西武の背番号「18」が、大きな期待を背負いスタートを切った。【矢後洋一】