広島ドラフト2位の横山弘樹投手(23=NTT東日本)は黒田流の男気(おとこぎ)で「弱点」を補う。右投げ左打ちだが桐蔭横浜大、NTT東日本とリーグ戦は指名打者制だったため、公式戦では大学4年で出場した神宮大会の1打席だけ。首脳陣からは右腕保護のため右打ち転向も打診されたが、バントと安打の確率アップのため左打席を選択。食らいつく黒田流の打撃で自分を助ける。

 26日、室内練習場を締め切って行われた「バント・バスター」のメニュー。横山は黒田、野村ら先輩投手とマシンに向き合った。本格的に打撃に取り組むのは宮崎日大時代以来、実に7年ぶりだ。高校時代は練習試合で本塁打を放ったことがあるというが…。球速140キロの打席にすら立ったことがないという。

 「本当に分からないことだらけです。まずはサインに忠実にというか…。バントとか、バスターとか戦術に堅実にやりたいです」

 右投げ左打ちだ。中学時代に「かっこよさと、右でまったく飛ばなかった」という理由で転向。しばらく両打ちだったが、高校からは投手の練習に専念し左打ちとなった。桐蔭横浜大では4年で出場した神宮大会で1打席立っただけ。「初球を打って三ゴロ。新品のバットが一振りで真っ二つになってしまって」。打席では苦い記憶も多い。

 プロでは右腕保護のため、投手は左打ちから右打ちに転向させるケースも多い。横山にもプランはあったという。だが横山自身がこれを断った。この日同じメニューをこなした黒田の打席での姿も、脳裏にはあった。内角をえぐられ、阪神藤浪に歩み寄る姿、負ければ4位確定の試合の3回の打席でファウルで粘り、13球を投げさせた姿勢…。

 「黒田さんのようになるのは簡単ではないと思いますが、できれば自分を助けることにもつながる。ファウル、ファウルで粘れるようになりたい。何より右だとまったく打てない。それだと意味がないので」

 利き腕の保護よりも、自身の投球、チームの勝利に貢献出来る方を選択した。投球でも快投を連発し、ローテ入りに大前進。開幕カードDeNA戦(マツダスタジアム)でマウンドに立つ可能性もある。謙虚さと不安と誇りを持ち「右投げ左打ち」で勝負する。【池本泰尚】