巨人のエースとして、開幕からフルスロットルで駆け抜ける。3年連続で開幕投手を務める菅野智之投手(26)が、開幕前の最終登板となった楽天戦で3回無安打無失点と完璧な投球。2回にはウィーラーを最速タイの153キロで空を切らせ、オフに磨き上げた速球の進化を証明した。この日、開幕ローテ候補だった内海哲也投手(33)が2軍に降格し、開幕からの2カードは5人で回すプランも浮上。大黒柱がフル回転する。

 表情が変わった。2回無死、ウィーラーに1-2からのフォークを左翼ファウルゾーンの5階席に運ばれ、菅野の闘志にスイッチが入った。「大きなファウルを打たれて、イラッときたので三振を狙いにいった」。5球目は最速の153キロ直球で勝負。見送られ、再び153キロの直球で空を切らせた。「最善の準備ができた」。3年連続の開幕投手に向け、最高級の仕上がりを披露した。

 結果以上に、中身に意味のある三振だった。相手は直球勝負に、強さを発揮する外国人選手だったが、真っ向勝負で上回った。スライダー、フォークを筆頭に多彩な球種で三振を奪取する従来の菅野スタイルから、進化を証明。「真っすぐ勝負をしようと思えたのは成長。(捕手の)阿部さんも、サインを2球連続で続けてくれたのは、信頼してくれてるのかなと感じた」と振り返った。

 威風堂々のエースに、スタートダッシュの命運を託す可能性が浮上した。この日、開幕ローテ候補だった内海が、不調で2軍に降格。田口、高木勇、ポレダ、ルーキー桜井の5人が確定する中、6枚目が空いた。ロングリリーフで結果を残した今村も候補に残しながら、菅野が25日のヤクルトとの開幕戦後、中5日で31日のDeNA戦に回るプランが浮かび上がった。

 完璧な仕上がりの菅野について、高橋監督は「特にないですよ」と具体的な言葉を避けたが、裏を返せば当然とばかりの信頼の証しだった。開幕投手とは何か、と聞かれた菅野は真っすぐな目で言った。「1年間で12人しか投げられませんし、特別なマウンド。託してくれた監督の思いも胸に、しっかりと投げられる喜びを感じながら、投げていきたいです」。心技体ともにそろえ、開幕のマウンドに立つ。【久保賢吾】