涙のち笑顔のタイムリーだ。ロッテ清田育宏外野手(30)が、2-2の9回2死三塁で中前に決勝適時打を放った。試合前の練習中、自らが投げたボールがすっぽ抜け、見学に来ていた男の子の顔面を直撃。泣かしてしまうアクシデントがあったが、最後でヒーローになった。ソフトバンクの連勝を8で止め、ゲーム差を4に縮めた。パ・リーグの灯を消すわけにはいかない。

 清田の狙いは定まっていた。同点の9回2死三塁。相手は初対戦のソフトバンク・スアレス。「(前打者の)井口さんの打席を見させてもらって、球は速いけど、意外と抜け球は少ない。外の真っすぐに割り切りました」。その通り、1ボールからの2球目、外角156キロを中前にはじき返した。二塁本多が懸命にグラブを伸ばす先を破った。「イメージより高く来たけど、良いところに飛んでくれました」と笑顔で喜んだ。

 試合前は、顔がこわばっていた。キャッチボールで投げた球がすっぽ抜けた。ファウルゾーンで見学していた2歳の男の子の顔面を直撃してしまった。一瞬の沈黙の後、大声で泣きだした。必死に声をかける母親。球団スタッフが急いでトレーナーを呼ぶ。緊迫した空気が流れた。医務室へ消えた親子を、清田も急いで追い掛けた。

 幸い、大事には至らなかった。試合開始直前、男の子と再会。サインボールとお菓子をプレゼントし「今日は絶対、勝つからね」と約束した。「僕が投げたのが当たってしまったので…。最後にやれた。ホッとしました」。1児の父は心底、安心した様子で話した。

 負ければ、ソフトバンクと6ゲーム差まで広がる危機だった。昨季ブレークしたバットマンも、試合前は打率2割2分2厘まで低迷。ただ、得点圏では3割を超える。「今日は勝ったのがでかい。打率は気にするの、やめました。悪いんで。チャンスで1本打とうと集中してます」と、少し恥ずかしそうに明かした。パの灯は消せない。また打ってみせる。【古川真弥】

 ▼ロッテが9回、清田の勝ち越し打で勝利。ソフトバンクの連勝を8で止め、ソフトバンクが4月15日楽天戦から続けていた1点差試合の連勝も8で止めた。清田は今季、打率2割3分1厘ながら9回に限れば4割2分9厘(14打数6安打)とイニング別で最も当たっている。出場38試合で19打点だが、涌井の登板試合では8試合で9打点。殊勲安打も全12本のうち6本を涌井登板試合でマークしている。