最終決戦で、一世一代の「二刀流」で舞う。日本ハムが3勝2敗と10年ぶり日本一に王手をかけ、今日29日に「SMBC 日本シリーズ 2016」の第6戦がマツダスタジアムで行われる。大谷翔平投手(22)はベンチ待機が決定。勝ちパターンに持ち込めば、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで最速165キロをマークした守護神起用の可能性が浮上した。第7戦にもつれれば黒田との投げ合いが見込まれる先発が有力。スターターと抑えの「二刀流」で頂点を奪う。

 特別な一手が、飛び出すかもしれない。大谷は当初、今日29日の第6戦先発が見込まれていたが、増井が先発として予告された。DH制のない敵地とあり、本来なら大谷の役目は代打の切り札となる。ただ、あと1勝で06年以来の日本一が決まる。優位のまま試合終盤を迎えた場合、守護神としての登板もありえる。

 移動日の28日、栗山監督は大谷起用の一端を明かした。「明日(29日)どういう風に使うか考えている。いろんな幅があるけど先発投手ではない」。第6戦の最後を抑えて日本一となれば最高だが、劣勢になるなど状況に応じては登板を見送る。第7戦の先発へスイッチするためだ。この場合は現役最後の登板となる広島黒田と投げ合うことになりそうだ。栗山監督は具体策は明かさなかったが、こうした2段構えの起用を視野に入れているようだ。

 日本シリーズ進出を決めた16日のソフトバンクとのCSファイナルS第5戦でも9回に登板した。日本球界最速を更新する165キロを3球マークするなど、3者凡退でプロ初セーブを挙げた。この後、栗山監督は「2度とこれは起こらない」と封印した手だった。CSは全5試合、投手と野手で出場した。しかも第5戦はDH出場後にマウンドに上がった。肉体的な負担は大きく、今回はベンチ待機からと軽減される。

 大役を受けて立つ大谷も、使命感をみなぎらせた。「(起用法は)言われたところで頑張ります。いつ行けと言われてもいい。中(継ぎ)でもそうですし、こだわりはないです」。アマ時代を通じて自身初となる日本一へ、なりふり構わずに臨む。

 前回12年の日本シリーズは、ドラフトで強行指名された直後。大谷の記憶の片隅に残っている。「見てました。(日本一に)なりたいですね。それはみんな思ってますし。やっぱり経験してみたいなと思います」。真っ赤に染まった敵地で、主役に…胴上げ投手になってみせる。

 ◆3回胴上げ投手 同一年の公式戦、CS、日本シリーズで胴上げ投手は09年クルーン(巨人)13年田中(楽天)15年サファテ(ソフトバンク)がマーク。田中は公式戦の西武戦で球団初Vを決めるセーブ。ロッテとのCS、巨人との日本シリーズでもセーブで締めた。サファテは公式戦優勝決定試合がサヨナラ勝ちとなった14年も、結果的に3試合の最後に投げている。