広島の新入団選手発表が13日、広島市内のホテルで行われた。ドラフト1位の慶大・加藤拓也投手(21)は、新人6選手が並んだ壇上でも堂々とプロへの意気込みを語った。幼少期から英才教育を受け、文武両道を貫き、自らの力でこじ開けたプロ野球の扉。秀才右腕が、野球界の最高峰に挑んでいく。

 マウンド度胸が売りのドラ1加藤は、金びょうぶ前の華やかな壇上でも強気だった。得意科目を聞かれ「高校の頃までは数学が一番得意だった。問題集とか答案をずっと眺めてた。覚えるだけだったし、計算も嫌いじゃなかった」と言い切った。野球に打ち込むために大学では文系に進んだ秀才が、プロ野球の扉を開いた。

 幼少期から「東大に行かせたかった」という父弘志さん(71)から英才教育を受けてきた。3歳、6歳が教育の節目とし、まだ字を読めない3歳時に本を与えられ、6歳時には理解するように教育された。

 食事管理は母裕子さん(58)の手料理で徹底された。「まずは胃を大きくするためにバランスよく食べさせました。特に野菜ですね」。小学生時代は“肥満体形”と指摘されたため、脳への影響を考慮し、スポーツをやらせた。まずはサッカーを始めたが、体形からポジションはゴールキーパー。運動量の少なさに野球に転向したことが、人生を変えた。

 中学の杉並シニア時代に「プロは諦めた」ものの、慶応を経て慶大で才能は開花。最速153キロをマークし、落差のあるフォークで空振りを奪った。父と「大学からプロへ行けなければ、野球をやめる」と約束。就職浪人を覚悟して野球にすべてを注いだ。今年ドラフトで指名されたのは育成を除いて87人、当然ドラフト1位は12人しかいない。3000人超が入学した東大よりも、狭き門を突破。「社会に貢献する人になってもらいたかった。税金をたくさん納めるような」。父の願いは違う形でかなった。

 まだ戦いのスタートライン。来春の1軍キャンプ同行は決まっている。「真っすぐで、力で押していくスタイルをプロでもやっていきたい」。秀才右腕が、野球界のエリート打者に真っ向勝負を挑む。【前原淳】