待望の勝利だった。インフルエンザA型にかかり、復帰戦予定だった前日26日の一戦が雨で流れていた阪神藤浪晋太郎投手(23)が、苦しみながら17年甲子園初マウンドで今季2勝目を手にした。5回5安打2失点。本来の調子からは程遠かったが、自身10戦ぶりの甲子園勝利。虎のVに欠かせない右腕が帰ってきた。

 右手の親指付け根に赤色が見えた。試合序盤、藤浪は投球中に爪で皮膚を引っかけ、出血していた。時にはユニホームで拭き取り、時には舐めて…。なんとか5回を持ちこたえて1年ぶりの甲子園星を手にした後、猛省の言葉が並んだ。

 藤浪 上下のタイミングが合わず、しっくりこなかった。(出血は)特に影響はなかった。何が悪い点なのか見つけられず、修正できなかった。分かれば試したりもできたんですが…。

 インフルエンザ発症からの復帰戦。中13日でのマウンドは制球に苦しんだ。出場選手登録を抹消された10日の間には、福原2軍育成コーチと「縦に振る」フォームも再確認。「準備万端で試合に入ったつもりだったんですが、空気や雰囲気がブルペンとは違った」。直球は最速155キロを計測しながら度々抜けた。

 2回で4点リードをもらいながら、3回は自身の失策から4番筒香に中前適時打を献上。5回は筒香に1号ソロをバックスクリーン右に突き刺された。8番戸柱に2四球、9番井納に1四球を与えて5回5四球2失点。球数は108までかさみ、降板を余儀なくされた。

 藤浪 代えられてもおかしくない内容だった。もちろん(5回降板は)悔しいし情けない。中継ぎの方々を休ませられず悔しい。

 WBC期間中の3月、アストロズ青木と野球談議に花を咲かせた。「もっと野球を楽しんだら?」。そんな助言を受ける中、メジャーの感覚にカルチャーショックを受けた。「向こうでは6回2失点でも『グッジョブ!』、普通の外野フライを捕っただけでも『グッジョブ!』と迎えられるらしいですね」。新たな考え方は興味深かった。それでもこの日、今季2勝目をあげた藤浪は心の底から反省の言葉だけが湧き出てきた。虎の大黒柱としての自覚が、そうさせるのだろう。

 DeNA相手に8連勝。甲子園では16年4月12日DeNA戦以来、登板10試合ぶりの白星となったが、そんな数字は気にも留めない。「(良かった点は)試合を壊さなかったことぐらいです。次回以降はしっかり試合中に修正できるようにしたい」。笑顔なき勝利。自覚と責任感がさらなる進化を促す。【佐井陽介】