小さな左腕は世界に通ず-。決勝戦の先発を任された田口麗斗投手(22)が7回を被安打3、無失点と好投し優勝の立役者になった。ボール1個を制球する繊細な投球で、強振する韓国打線を手玉に取った。今大会に招集された田口、今永、野田、堀の4左腕はいずれもキレと制球力が真骨頂。計15回1/3を無失点に抑え、日本のお家芸が稲葉監督にとっても大きな力になることを証明した。

 小さなサムライ左腕・田口が、制球力という“懐刀”を抜いた。主導権を引き合っていた両軍無得点の4回1死。相手は韓国の3番具滋■。2球で追い込んでから、コントロールの精度をもう1段階、上げた。

 「今年の集大成だと思って投げた」。7球目、外角低めにピンポイントの133キロ直球を投げ込んだ。判定はボール。8球目。同じく133キロの直球を、あえてボール1つ、約7センチ分中へ入れた。振っても届かないコースと高さ。「持ち味の低めへのコントロールが出せた」。稲葉監督の初タイトルを呼び込んだ。

 中日でプレー経験のある宣銅烈監督を「制球力が非常にいい。韓国にも同じタイプがいないわけではないが、制球力については学んで欲しい」とうならせた。キレ味。確実に相手を切り刻む正確さ。技巧派のサウスポーは日本が世界に誇れる“専売特許”だ。18日の台湾戦で快投した今永、2試合に登板した野田と堀。今大会に選出された4人の左腕がこぞって躍動した。4人とも身長180センチに達せず、150キロの直球もないが、国際試合では極めて有効だと証明した。

 歴史が物語っている。ソフトバンク和田、巨人杉内、ヤクルト成瀬。緻密な配球に応える制球力とキレを武器に国際試合で輝いてきた。日本球界が培ってきた巧の技術は、稲葉監督にも大きな支えになるはずだ。

 田口は今季、CSを逃した巨人の中で13勝4敗と貯金を9作った。日本代表では16年の強化試合オランダ戦でデビューして2回4失点と苦しんだが、決勝の舞台で成長を披露した。「なかなかない経験をさせてもらった。また稲葉監督の下でやれるように日々精進したい」。“伝統芸能”を磨き、もっと大きな舞台で見せつける。【桑原幹久】

※■は日の下に立。