有終の美だ。広島ドラフト1位の広陵・中村奨成捕手(18)が19日、広島商との定期戦(コカ・コーラウエスト野球場)に臨み、決勝2ランを放った。高校最後の対外試合で通算45号。今夏の甲子園で1大会個人最多となる6本塁打を放ったスターが、ここぞの勝負強さを見せつけた。プロでも最大の持ち味の発揮に意欲を示した。

 甲高い金属音が球場に響き渡った。スタンド全体が大歓声に包まれ、柵越えを確信。打った本人も、ゆっくりと走りだした。高校通算45本目を左翼ポール際にかっ飛ばし「悔いのないように振りました。当たりはあまりよくなかったけど、みんながはしゃいでくれていたのがうれしかった」と笑った。内角高めの直球にバットを素直に出した。

 広陵のユニホームを着て行う最後の対外試合。3年生同士の決戦で、勝負強さを発揮した。同点に追いつかれた直後で迎えた好機、5回2死二塁での豪快弾だ。「勝負強さが売りだと思っているので、あの場面で打てるのはチャンスに強いのかな、と思います」とにっこり。プロでも「1点を争う場面で、投手を助けられるような打撃をしたい」という。今夏の甲子園で1大会個人最多本塁打の6アーチをかっ飛ばすなど、抜群の勝負強さを披露したが、プロでもその持ち味を発揮するつもりだ。

 同校の中井哲之監督(55)から「ラスト金属な」と言われ、握ったのは金属バット。だが普段は木製バットで練習を重ね「ちょっとずつ振れるようになってきたし、少しずつ対応も出来てきていると思う」と手応えもある。1月の新人合同自主トレまでに「体重も80キロに乗せたい」と3キロの増量を最低目標に掲げた。豪快な打撃もさることながら「まずは守備からアピールしたい。送球、キャッチングの精度を上げたい」と話すなど、地に足がついている。

 二盗を決めるなど、この日4打数2安打の大活躍。試合にも勝って有終の美を飾った。広島生まれのスター候補生がプロの門をたたく。「レベルアップした姿を見せることが、(3年間の)恩返しになると思う。県民の方に勇気、元気を与えられるような選手になりたい」。感謝の3年間を本塁打で終え、中村が金属バットを置いた。【池本泰尚】