巨人岡本和真内野手(21)が今季1号3ランで今季初勝利を決定づけた。1点リードの8回2死一、二塁、阪神藤川のフォークを強振。左中間席の最深部に到達する本拠地初本塁打は、待望の今季のチーム初本塁打となった。近未来の主砲としての期待を一身に受ける4年目の長距離砲が、どでかい1発で歩み出した。

 打球の行方に興味を示さなかった。岡本は手に残る感触で確信した。1点リードの8回2死一、二塁。阪神藤川の落ちきらないフォークを力強くすくい上げた。「狙ってない。勝手に反応した。感触は良かったです。打球は見ていません。久しぶりに1軍(の公式戦)で本塁打を打てたので素直にうれしかった」。ガッツポーズを作ることなく悠然とダイヤモンドへと駆けだした。大歓声を浴びながらの周回ほど心地いいものはない。

 前夜の開幕戦は散々だった。ストライクゾーンから逃げていくボール球に手を出し、バットの操縦力を失った。4打数無安打の屈辱からの門出だった。「難しいボールにいっていた。今日の1打席が大事だと思っていたし、明日につながる打席にしようとだけ意識していた」と頭と心を整えてリベンジの舞台に臨んだ。2回の第1打席で中前打で今季初安打をマークすると、1発を含む4打数4安打5打点。初の猛打賞で前夜の借りを返した。

 “10割男”から懇願された注文にも1歩近づけた。2月のキャンプ中に愛用するオレンジ色のランニングシューズを履こうとすると、インソール(中敷き)に油性ペンで文字が書いてあった。「ホームランを25本以上打つ!! おかもとかずま」。宿舎で隣の部屋だった小林が書き込んだものだった。「絶対に小林さんです。恥ずかしいからやめてほしいんですよね」と言いながらも、自身のサインも書き加えて、猛練習に明け暮れたキャンプ期間を過ごした。

 堂々たる振る舞いと、愛らしさを兼ね備える。今どきっぽさをちらつかせながら、昔かたぎの野球人らしさも残す。奈良・智弁学園時代から本塁打を代名詞に野球人生を歩んできた。「ずっと1軍で本塁打を打ちたいと思ってやってきた。でも、今日で満足することなく、これから数多く打てるようにしたい」と、もっと先へ目を向けた。1号、1勝、その先にある独り立ちへ。「まだ、始まったばっかり。油断はしない。1年間、気を引き締めてやると決めている」と言った。手に残った感触に慢心はない。岡本の打球の行方はチームの勝敗、未来を示す。【為田聡史】