お父さんはすごいんだぞ! 巨人内海は初回先頭から父の生きざまを示した。江越に遊び球はなかった。2球で追い込み、最後は130キロも魂のこもった高め直球で空振り三振を奪う。通算1441個目の三振で今季初登板を出発した。「逆球は多かったが、勢いのある球を投げられた」。最速139キロも球速以上に阪神打線を押し込んだ。6回1死一、三塁で降板し、唇をかんだが、4安打2失点に6奪三振。責務を果たし、14年連続の白星をつかんだ。

 父の背中を見せたかった。4月6日、10歳の長男瑛太君と自宅テレビで楽天則本の通算1000奪三振を見た。

 「則本ってすごいね!」

 と目を輝かせる瑛太君に、妻聡子さんが「パパだってすごいんだよ」と話したが、切り返された。

 「絶対うそだ!」

 当時1440奪三振の内海は自分の成績をスマートフォンで調べて見せたが納得してくれない。「息子の中で俺は、東京ドームにはいないんだ」。最後に2桁勝利を挙げた13年は5歳。「お父さんはプロ野球選手だと、勝っている姿で見て感じてほしい」。2軍暮らしが続き、1軍の舞台が遠い日々を過ごした。でも、子どもたちの存在が気持ちをつないでくれた。

 お立ち台を降り、真っ先に一塁側席の子どもたちへ駆け寄った。「長男も大きくなった。1軍で勝った姿を見せられてよかった」。来週は5試合のため次回登板は未定だが、6枚目の先発の権利は得た。「1軍の選手としてもっと勝ちたい」。チームのため、誇れる父でいるために、左腕を振る。【桑原幹久】