西武辻監督の開口一番は「今日は8番、9番じゃないかな」だった。もちろん、逆転3ランを含む4安打の秋山には「見事」と敬意を表したが、最大の勝因には8番炭谷と9番金子一を挙げた。

 劣勢を変えたのは、4回だった。「1-4になってからの2点が大きかった。銀仁朗、金子のタイムリー」と辻監督。ソフトバンク中田を攻め、まずは2死一、二塁で炭谷が右前適時打。金子一が中前適時打で続いた。直前3回に2点を失い、3点差に広げられていただけに、大きな2得点だった。

 炭谷、金子一の連打は2点を追う6回にもあった。2死走者なしから二塁打、左前打で一、三塁とし、秋山の逆転3ランを呼んだ。辻監督は「四球があって、下位(打線)からヒットが出て。久々だよ! 久々!」。爆発的な攻撃力で勝利を重ねた4月までと同じような得点シーンに満足そうだった。

 特に、炭谷はプロ初となる4安打。「特にないですよ。1試合に固まって出ただけ。継続していかないと」と、自分の成績は意に介さなかった。それよりも「今年の最初は下位からチャンスが作れていた」と、打線としての攻撃に手応えを口にした。

 さらに、守備でのワンプレーが光った。秋山の逆転3ラン直後の6回の守り。先頭で代打グラシアルに右前打を打たれた。続く上林が送りバントを試みたが、バットに当てられなかった。炭谷はグラシアルが飛び出したのを見逃さず、一塁ベースカバーに向かった浅村に送球。けん制死を奪った。

 とっさの判断があった。「浅村は、まだ(ベースカバーに)入ってなかった。力を抜いて、合わせて投げました」。思い切り投げるのではなく、浅村がベースに着くのに合わせて力を調整。絶妙な力加減で刺した。辻監督が「銀が投げたのがすごい。浅村もうまいこと、入った。ミスをしたから、向こうも流れを失った」とたたえるプレーだった。この時点では、まだ1点差。反撃される芽をつみ、終盤の6得点で勝負あり、だった。

 ヤフオクドームの3連戦で勝ち越したのは、15年4月以来だ。炭谷は「去年は1勝11敗とやられたけど、個人的には、今年はオープン戦でも勝っている。意識はしてません」とキッパリ。首位を走る以上、鬼門は存在させない。【古川真弥】