西武中村剛也内野手(35)が2連敗中だったチームを救った。今季2度目の5番に入り、3安打3打点の活躍。1-2の3回2死三塁では、日本ハム堀から左翼席最上段へ逆転の24号2ランを放った。主に5番、6番を打ち、18本塁打の外崎が離脱したが、おかわり君が攻撃力低下の心配を吹き飛ばした。負ければ2位ソフトバンクと3・5ゲーム差だったが、嫌な流れも断ちきった。

台風21号による強い逆風も影響しなかった。3回、中村の逆転2ランの打球は、高く、大きなアーチで左翼席最上段へ達した。カウント2-2から堀の低めカーブを仕留めた。見送ればボールも、バットが届けば関係ない。「うまく打てましたね」と胸を張った。

その3時間半ほど前。グラウンドに現れると、中堅後方バックスクリーンの上で激しくはためく球団旗を目にし「うわっ」と驚いた。だが、打撃練習ではスタンドにポンポンと放り込んだ。「あれぐらいの(高い)打球なら、逆に伸びる」と確信。風を過度に意識することなく、打席に入っていた。「当たれば飛びます」が口癖。真骨頂だった。

特大アーチでチームの危機を救ったが、自らの苦境を救ったのも、1発への渇望だった。絶不調に陥った4月前半。好機でバントを命じられた。送れなかった。すると、1球でサインが取り消された。結局、凡退。ベンチに引き揚げる時、バットを地面にたたきつけた。相棒を大事にする男が感情に任せてしまった。その時、自然と思った。

「今年で野球やめよう」

バントが嫌だったわけじゃない。「打てない。僕が監督でも、そうした」。打てず、送れず、あげく、サインが変わる。ふがいなさが募った。

故障による2軍再調整をへて6月に1軍復帰したが、今度は出番がなかった。過去6度の本塁打王が、7試合連続で欠場。代打もなかった。その時、思った。

「やっぱり、ホームランが打ちたい」

切れかけた心に再び火が付いた。8試合ぶりに出た同27日オリックス戦で金子から2本塁打。復活ののろしだった。7月以降は打率3割超と打ちまくる。

やっぱり、中村の1発は元気をくれる。「僕の口からは言えませんよう」と、おどけて言った。連敗ストップ。優勝へ、さあ、ここからだ。【古川真弥】