秋の大収穫祭は怒とうの盗塁ラッシュ!! 阪神矢野燿大監督(49)が17日、就任後初の対外試合となる韓国・LG戦(安芸)に臨み、大勝を飾った。1回に4盗塁を決めて9点を奪ったほか、その後も走り続け、1試合8盗塁をマーク。今季、2軍監督としてファーム日本一に導いた「超積極野球」を見せつけた。大砲候補の中谷&大山が本塁打を放つなど、大技小技満載。秋季キャンプの総仕上げでイキのいいプレーが目立ち、来季に向けて好スタートや!!

常識破りの猛攻撃こそ、矢野阪神のシンボルだ。新体制の初陣。韓国・LG戦は1回から足攻め連発で、あっさり勝負を決めた。鮮やかな速攻だ。先頭江越が左前打で出塁。2度のけん制で帰塁した直後だ。猛然とダッシュし、悠々と二盗に成功。中前打の高山も初球に仕掛け、再び二盗を決めた。早々に無死二、三塁の好機を築くと猛打爆発。4連打や、さらに中谷の3ランで一気に9点を奪った。

足が生んだ猛攻だ。なんと、初回から1イニング4盗塁。相手投手が19歳の若手とはいえ、威勢のいい攻めっぷりだ。ノーサインで戦った矢野監督は平然と言い放った。「あれは普通やで」。さらに続けた。「2軍でやってきているメンバーやし、可能性を広げるために、みんなこうやってやるぞと、今年、2軍でやってきていた」。2軍監督だった今季、ウエスタン・リーグ新記録のチーム163盗塁に導き、ファーム日本一に輝いた。矢野チルドレンが同様の戦法で快勝だ。

今年、指揮官が言い続けた言葉がある。「当たり前のレベルを上げよう」。アイツが走れるなら俺も走れる。心のリミッターを外し、相乗効果が盗塁ラッシュにつなげた。2回以降も攻め手を緩めず、1試合8盗塁。指揮官が褒めちぎったのは6回2死でディレードスチールを決めた一塁走者熊谷だ。「警戒されているなかで、どこで走るかをずっと見ていた。マークされたなかで、ああいう手段もある。あれをやっと。シーズンでもあまりできていなかった」と成長を認めた。

熊谷が相手バッテリーのスキを突いてスタートを切ったように、イケイケドンドンに工夫も加わる。初めての対外試合で、矢野野球の一端がかいま見えた。10月の就任会見でも「俺は理想は点を取りたい」と話していた。走塁の怖さを誰よりも知るからこそ、機動力野球を重んじる。「俺が捕手ならすごく嫌。『動くん違うか』とか。配球も変わったり、キャッチングも腰が浮いたり。投手だって打者に集中できない」。敵が嫌がる、したたかな攻めで挑む。秋季キャンプ総決算の実戦で、戦い方が浮かび上がった。【酒井俊作】

▼阪神の1イニング最多盗塁は5。2リーグ分立後では3度あり、直近は86年8月7日ヤクルト戦8回に吉竹、バース、岡田、山脇、柏原が走っている。プロ野球最多は6盗塁で、最近ではヤクルトが08年7月17日阪神戦9回に記録している。