オリックス金子千尋投手(35)が21日、大阪市内の球団施設で取材に応じ、自由契約の可能性を初めて認めた。今季の年俸6億円から、野球協約の定める減額制限を大幅に超す5億円減の年俸1億円の提示を受けた。20日には球団側と3度目の話し合いを持ったが、結論には至らず、退団の可能性も浮上。そこにはエースの葛藤があった。

「オリックスが好きだからこそ、今、新しくなろうとしているチームにいていいのか。いることによって、マイナスになることもあるんじゃないか。考えることが多くなった。現役を続けていくことを考えても、そう長くない。自分の目標に一番近づける方法、環境というのも、ちょっと考えてみようかな、という気持ちもある。自由契約を選択する可能性もあると思います。選択したとしても、球団側からは残留を認めてもらったので、オリックスも考えています」

14年に16勝を挙げ、沢村賞を受賞。そこからFA残留で4年契約を結んだが、15年以降、2ケタ勝利は1度だけ。今季は4勝と精彩を欠いた。「僕が入る前からも、入ってからも優勝できていない。僕に原因があるのかなと思うことが正直ある。僕がいなくなったら、オリックスが優勝できるんじゃないか」と自責の念がある。「条件にこだわりはない」と金銭闘争による対立は否定。話し合いでは、チームの方向性について、球団側の考えを確認しているという。

30分に及ぶ激白では、チームを思って声を詰まらせ、目をうるませる場面もあった。日時は決まっていないが、今後も話し合いの場は持つ予定。しかし円満解決に向かうかは不透明だ。実際に、球団側と自由契約の話をしていることも自ら明かした。残留の可能性は残しているが、他球団への移籍という流れが現実味を帯びてきた。【田口真一郎】(金額は推定)

◆再契約メモ 自由契約になった選手が再びその球団と契約した例は、最近では05年吉井理人投手(オリックス)小倉恒投手(楽天)06年坪井智哉外野手(日本ハム)10年多田野数人投手(同)らがいる。吉井は04年12月に自由契約となり、仰木新監督に声をかけられテスト生として05年2月のキャンプに参加し合格。坪井や多田野はトライアウト後に興味を示す球団がなく、再契約に至った。