選手のプレーを連続写真で分析する「解体新書」。今回はオリックスのドラフト1位、太田椋内野手(18=天理)を和田一浩氏(46=日刊スポーツ評論家)が解説した。和田氏は春季キャンプで視察した高卒新人野手の中で、太田の打撃をNO・1と高く評価。右腕の骨折で離脱中だが、早期の復帰と1軍での大暴れを願った。

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今年の高卒ルーキーは当たり年の予感がする。その中で将来性を評価すると、太田をNO・1に挙げたい。まだ体の肉付きは物足りないが、ナチュラルな力強さと、センスのいいスイングは、ほれぼれするような資質を感じさせる。

自然体で構える(1)にセンスの良さが漂っている。グリップの位置は、軽く左腕に張りができる程度に捕手側に深めに引いている。この位置ならインパクトまでの距離が長く、強い打球を打つ助走が十分に取れる。下半身の重心比率も軸足の右が7か8ぐらいで、左足は2か3ぐらい。バッティングは投手に向かって後ろ側の半身が大事。上半身、下半身ともに右半身に重点を置いている構えは、理にかなっている。

(2)で足を上げ、(3)から踏み出していくが、(4)の形が素晴らしい。投球モーションで「ヒップファースト」の形は大事だが、打撃も同じ。力を伝えたい方向にお尻が突き出ている。スイングの円運動に加え、腰が横にスライドするような縦の動きを入れることが重要。この動きができるとインパクトゾーンが長くなり、きれいなレベルスイングが実践できる。もう少しベルトのラインが地面に対して平行になると完璧だが、下半身と体幹が強くなれば自然にできるようになる。

(5)と(6)で左足を踏み込んでいくが、ここで上半身は下半身と逆の動きをする「割り」の動きができている。大きな動きではないが、若干グリップの位置が上がっているのが分かるだろう。厳密にいうと(7)の少し前の瞬間がトップの形。グリップと両スパイクを結ぶように線を引くと、きれいな直角三角形になる。これならインパクトゾーンから逆算して、しっかりと距離が取れている。この写真だと分かりづらいが、バットの角度は三塁側ベンチの方に寝ていて、グリップの位置は肩のラインより前で収まりながら、バットのヘッドは後頭部の後ろに入っている。この形が最もバットを出していきやすい角度で、理想的なトップの形が作れている。

ここまでの流れは、プロの一流打者と比べても遜色ない。しかし残念なのが(8)の右膝の動き。右膝が内側に折れるタイミングが早すぎる。目安として、右肘と右膝の位置を比べてほしい。右膝が写真の位置なら右肘はもっと体の前で、右膝と同じ位置まで引っ張ってこられればいい。同じように、右肘が写真の位置なら、右膝は右肘の位置まで我慢できているといい。

教育リーグの試合で、右腕に死球を受けて骨折。ここでの上半身と下半身の動きのズレが死球の原因だろう。下半身の動きに比べて上半身の動きが遅れると、その遅れを取り戻そうとして体が力んでめくれてしまう。上半身を一気に動かそうとするから余裕がなくなり、球が避けられない。体の内側に当たる死球は、打者としてとても恥ずかしいこと。絶対に直してほしい改善箇所として挙げられる。

褒めていいのか悪いのか分からないのが、(9)と(10)の右足の動き。右足のスパイクの向きを比べると、インパクトした後、再生録画を巻き戻したような動きになっている。一般的な動きなら(10)の右スパイクの形でインパクトし、(9)の右スパイクの動きで打球を押し込む形になる。打球は左越え二塁打になったが、(11)と(12)の形だけを見たなら右方向に打ったようなフィニッシュになっている。この一連の不可解な動きは、(8)で右膝が早く折れたミスを調整する動きなのかもしれない。それなら天才打者かもしれないが、天才的な動きというのは、そう何度もできるものではない。まずは骨折を完治させ、2度と体の内側に死球を受けないような打撃フォームを作り、1軍で大暴れしてもらいたい。

◆太田椋(おおた・りょう)2001年(平13)2月14日、大阪府生まれ。天理から18年ドラフト1位でオリックスに入団。高校時代は1年夏からレギュラーで通算31本塁打をマークした。父は近鉄元内野手でオリックスの打撃投手を務める暁氏。181センチ、78キロ。右投げ右打ち。