阪神が来季、15年ぶりの優勝を果たすための克服課題を日刊スポーツ評論家陣が「猛虎再建論」と題し、リレー形式で提言しています。第5回は現役時代に「権藤、権藤、雨、権藤」の流行語を生んだタフネス右腕で、98年横浜の日本一監督の権藤博氏(80)です。ここ数年低迷続きで今季はほとんど2軍暮らしだった藤浪晋太郎投手(25)について、「課題の大砲取りも視野に入れてトレードに出すべき」と大胆提案です。

  ◇    ◇    ◇

藤浪は今年、1軍登板が1回だけだった。いったい、どういうことですか。その8月1日の中日戦も、先発で5回途中まで投げて1点取られただけ。8四死球を与えたけど、1点に抑えたことは評価しないのか。

藤浪は荒れるのが持ち味なんです。四死球は1イニングで4個も5個も連続して出すわけじゃない。1試合で15個も20個も出すわけじゃない。四死球で満塁にしてもグランドスラムを打たれるわけじゃない。150キロを超す真っすぐが荒れてどこに来るから分からないから、打者は怖い。走者がたまっても、簡単には打てないんですよ。阪神打線も、もし藤浪が投げてきたらものすごくイヤでしょ?

私は17年の第4回WBCの投手コーチで彼を侍ジャパンに選んだが、当時から素材は大谷、菅野と並んでプロ野球界のスーパーAです。高卒入団から3年連続で2桁勝利でしょ。こんなスゴい投手、めったにいませんよ。ところが阪神は特にこの3年間、全く使いこなせていない。持て余している。1軍登板が1試合だけなんて、あまりにももったいない。ファームでの調整も、本人任せだったと聞く。誰も導いてやれないのだから、来年も同じになることは目に見えている。

阪神は自分のところでスーパーAを生かせないなら、トレードで出すべきでしょう。欲しい球団はいっぱいありますよ。パ・リーグなんて引く手あまたでしょう。本人が阪神以外でプレーしたくないというなら別ですよ。素材を殺すのなら、生きる道を探してやるのが球団の使命。環境を変えればとかのヤワな話じゃない。1軍で勝てる力があるのだから、1軍で使いたい球団に出せばいいんです。

藤浪を出せば、相当高いレベルの選手が取れますよ。得点力を上げるための大砲獲得とか、ウイークポイントを補うことを考えた方がお互いウィンウィンでしょ。使わないのに置いておいても、藤浪のためにもタイガースのためにもならない。藤浪も来年、また1つ年を取り、選手寿命が短くなっていく。買い手がなくなってから売りに出しても遅い。球界の財産をいつまでも抱え込んでいてはいけない。手に負えない、使わない財産は売るべきです。

藤浪もこういう使い方をされたら、精神面をコントロールするのが難しいでしょう。2軍で投げ続けても全く意味がないし、よっぽど俺のことが嫌いなのかと(苦笑)。今は宮崎のフェニックス・リーグに行っているようですが、一体どれほどの収穫があるのか。フェニックスは、もう少し頑張って力をつけたら1軍に上がれるクラスが行く場所です。調整以外で別格の選手が行くところじゃない。

阪神はローテ、先発にこだわるからおかしくなる。リリーフでいいじゃないですか。一番大事なのは1年間ベンチに置いて、戦力にすることなんです。でも使いこなせないならトレードしかない。決断の時でしょう。

 

※次回は大石大二郎氏