再び輝きを-。ロッテから金銭トレードで楽天へ移籍した涌井秀章投手(33)が、3球団目となる新天地での決意を明かした。

通算133勝の沢村賞右腕は昨季、わずか3勝にとどまった。西武時代に6年間ともにプレーした石井一久GM(46)の下で迎える新たなシーズン。家族と離れ、単身で乗り込む杜(もり)の都へはせる思いとは? 7つの問いへの答えに、16年目の覚悟がにじんだ。【取材・構成=久保賢吾、桑原幹久】

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【新生活】 「クール」「ポーカーフェース」の代名詞がぴったりな男は、初の仙台での単身赴任も自然体で乗り込む。

涌井 期待も不安もどちらもないです。寮に入るようなもの。米国に1人で行くわけじゃないですし。

【石井GM】 常勝軍団形成のためチームの変革をいとわない姿勢に、世間では厳しい意見も飛ぶ。涌井は西武でともに6年間プレー。背中を追った13歳上の先輩に請われて戦う意味は理解している。「GMへの思いは?」との質問から28秒の沈黙を経て、答えた。

涌井 (石井GMは)ネットですごくたたかれている。そういうのを結果で見返してやりたいです。

【居場所】 3度の最多勝。09年に沢村賞。栄光は数知れないが、16年目は新天地で原点に返り、再出発する。

涌井 西武、ロッテでも最初は(居場所を)取りに行きましたけど、(結果を出すことで)ある程度、与えられてた場所があった。もう1度同じ気持ちで取りにいかないと。

【エース】 高卒2年目の06年から15年間で7度の2桁勝利。プロ野球人生の大半で看板を背負った。

涌井 (楽天の)エースは則本(昂)でしょ。則本を中心にというのは固まってることですから。ただ、やる以上はそうなれるように頑張るだけです。

【先発】 昨年12月の入団会見。先発を「一番大事なポジション。ピッチャーから野球は始まる。そこを目指してみんな野球を始める。チームの中心」と評した。

涌井 こだわっているわけじゃないです。GMが先発で考えてるとおっしゃったので、応えたいなと。リリーフ? もちろん。言われたところでやるだけです。

【サイン】 環境の変化にはぶれないが、まだしっくりこない。

涌井 まだ「楽天」とか「イーグルス」は(サイン調では)書き慣れてないんですよね。楽天ポイントみたいに「R」って書いてます。

【目標】 プロ野球選手である限り、変わらない。

涌井 リーグ優勝、日本一です。

○…涌井はこのオフ、同僚となる岸、藤平、酒居らと千葉・館山で自主トレを行った。「体重をしっかり後ろに残して、変に流れすぎないように後ろに残す感覚」と昨季終盤につかんだ理想のフォームを固めるために、修正を重ねた。万全のコンディションで、1軍スタートが決まった沖縄・久米島キャンプに臨む。

◆楽天の投手事情 先発陣の柱は昨季けがに泣いた則本昂、岸。涌井も含め3本柱を形成したい。昨季8勝の石橋、守護神から先発再転向の松井、昨季チーム最多9勝の辛島にベテラン塩見、福井も控える。弓削、釜田、安楽、藤平ら若手の台頭も待たれる。救援陣では新守護神候補に森原、ブセニッツ、宋家豪、新外国人シャギワらが挙がる。ベテランの青山、久保、左腕の高梨に新加入の牧田、酒居と層は厚い。