中日平田「後悔してません」禁断ヘッスラで登録抹消

右足を固定し病院から戻った平田(撮影・前岡正明)

 中日平田良介外野手(29)は「禁断のヘッドスライディング」を後悔していない。20日、ナゴヤ球場で口を開いた。

 17日の西武戦(ナゴヤドーム)。3-1とリードした7回1死一、三塁。4連敗阻止がかかった試合。のどから手が出るほど追加点がほしい場面だ。投手は制球が不安定だった右腕南川。三塁走者の平田は集中していた。

 堂上への初球。捕手炭谷がスライダーを右後方にそらした。三塁側から見ると捕手とちょうど重なり、ボールの距離も測りにくい。実際には捕手からわずか10メートルほどに転がっていた。堂上がすぐ手で制止したほど。だが好スタートの平田はもう間近に迫っていた。頭から突っ込み、間一髪でアウトになった。

 ヘッドスライディングは珍しい。「自分に禁止していたから。数年ぶりでした」。大阪桐蔭時代の05年秋。韓国で行われたAAAアジア野球選手権大会に高校日本代表として出場したが、決勝の韓国戦で帰塁する際、頭から滑り込んで右肩を負傷した。関節唇損傷。プロ入りすら危ぶまれる重傷だった。いまだに影響が尾を引いている。

 平田によると、プロ入り後も3~4度、同じように帰塁で肩痛を再発させていた。落合博満前GMからも強く止められていたという。ヘッドスライディングももちろん同様。今回痛めたのは右肩ではなく右膝だったが、まさに禁断のプレーだった。

 森監督が指揮を執る今季の中日は「積極走塁」を掲げる。亀沢、京田、遠藤ら俊足選手が一塁ヘッドスライディングを当たり前のように繰り返している。絶対セーフになる、勢いをつけたいという思いからの行動だ。足で踏むより、塁審の判断を鈍らせる効果があるとも聞く。だが、目いっぱいのプレーは常にリスクと背中合わせということを平田の走塁は示した。

 翌18日、出場選手登録を抹消された。20日、名古屋市の病院で、完全に動けるようになるまで数週間程度と言われた。重傷ではないものの、レギュラー選手としては重い診断になった。

 「全試合出場ができなくなったのは残念ですが、後悔はしていません。自分の気持ちが出たプレー。とっさでした」。1点をもぎ取るため“本能”が下した判断だった。その後、武山の適時打で1点追加。平田を欠いた翌日も勝った中日は、勝率5割で交流戦を終えた。【柏原誠】