五輪に5人制「手打ち野球」?新競技を世界に普及

5人制野球の会場イメージ

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)はスイス・ローザンヌで1日、ベースボール型の新競技として5人制の「ベースボール5」のルールを発表した。2024年のパリ五輪に野球を残すため、バットを使わず、投手もいない「手打ち野球」のような新競技でベースボール型競技の魅力を欧州に伝える。球場や道具が必要ないため都市部での開催が可能で、バスケットボールの3on3のように、若者に向けた普及を目指す。

 20年の東京オリンピック(五輪)後も、野球を24年のパリ五輪に残す。WBSCの強い決意が、ベースボール5に込められた。「ハンドベース」あるいは「手打ち野球」と呼ばれた懐かしい遊びに似た新競技は、野球の弱点を消したもの。パリ五輪までに世界へベースボール型競技の魅力を伝えるとともに、将来的には5人制自体も五輪競技への採用を目指す。

 野球は、国際オリンピック委員会が本拠地を置き、五輪採用の鍵を握る欧州で著しく認知度が低い。まずはベースボール型の普及が、五輪参加には不可欠だ。「ベースボール5」は、自分でトスした球を手で打つため、バットが必要ない。柔らかいゴムボールを使うため、グラブも必要ない。野球は道具に多額の費用が必要。その点が途上国を含めた世界的普及の妨げになるが、この新競技には心配がない。塁間13メートルの内野があればOKで、立派な球場を建造しなくても可能だ。

 打球は内野でワンバウンドさせる必要があるルールのため、本塁打はない。投手はいないが、内野は5人制。野球同様、打者走者は打った後に一塁に向かい、送球される前に一塁を踏めば出塁できる。ただし、野球のように一塁の駆け抜けは不可。バッターボックスは本塁の後ろ側だ。5イニング制と試合時間は短く、野球が五輪採用時に問題視されたテレビ放送にも適している。

 WBSCは「若者向け、都市型」を強調している。バスケットボールが少人数の3on3で若者に人気を博したように「どこでも、手軽に」できれば、欧州でも人気を博す可能性はある。本来15人制だったラグビーも、7人制となることで16年リオデジャネイロ五輪に採用された。

 今回の発表についてリカルド・フラッカリ会長は「野球やソフトボールを現代の主要な世界スポーツだけでなく、若者にアピールし、長期的なオリンピックスポーツに発展させる」と話した。ベースボール型競技の普及目標は、今後10年で10億人。5人制が起爆剤となるか。【斎藤直樹】

 ◆20年東京五輪の追加種目 国際オリンピック委員会(IOC)は14年、開催都市に複数の追加種目を提案できる権利を与えた。東京五輪は、この制度が導入された初の大会。33の国際競技連盟のうち26が応募した。審査を経て組織委は15年9月、国内で人気がある伝統競技と、若者へのアピール度が高い競技を選定した。野球・ソフトボール、空手、スケートボード(ローラースポーツ)、スポーツクライミング、サーフィンの5競技が決まった。

 ◆2024年パリ五輪 IOCは17年9月13日、ペルーのリマで総会を開き、24年夏季五輪の開催都市をパリ、28年大会はロサンゼルスとすることを正式に決めた。2大会同時決定は五輪招致の深刻な冷え込みを受けた異例の措置だった。パリは100年ぶり、ロスは44年ぶりで、ともにロンドンと並ぶ最多3度目の開催になる。パリはエッフェル塔周辺やシャンゼリゼ通りなどの観光名所が競技会場となる計画が特徴的。