マルテを押しのけて/矢野監督×吉田氏対談1

阪神キャンプが行われている沖縄宜野座で対談した矢野監督(左)と吉田義男氏(撮影・清水貴仁)

本音は、4番大山! 阪神矢野燿大監督(50)と85年阪神日本一監督・吉田義男氏(85=日刊スポーツ客員評論家)が、沖縄・宜野座キャンプで対談した。同監督は注目の「4番」について「本音はそっち」と発言し、外国人選手よりも若手で生え抜きの大山を示唆。「3割、30本、100打点」の活躍を期待した。新旧監督のクロストークでは、優勝争いにも自信をみせた。【取材・構成=寺尾博和編集委員、酒井俊作】

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吉田氏(以下吉) やはり新外国人のマルテに対する期待度は高いね。

矢野監督(以下矢) 今はセンター中心のバッティングで、ファンの方はもっとホームランを打ってほしいと思っているかもしれません。でも長打も打てるだろうし、選球眼もいい。徐々に順応してくれればと思っています。

吉 マルテはどこまで上がってくるかだが、若手の大山のほうが、いい打球を飛ばしますね。

矢 大山はプロ3年目で、ちょうどいいタイミングです。自分の殻を破ってほしいと思っています。

吉 三塁の守備もまずまずだが、もうちょっと捕球からスローイングへの動きを素早くすればランクが上がる。守備が上達すれば、打撃が良くなる。逆も真なり。求めるのは右の長打です。ロサリオには、ほとんどがだまされた。

矢 ぼくのなかの一番の思いは、生え抜きの若い選手が、マルテを押しのけてやってくれることなんです。マルテには期待しますが、ぼくの本音はそっちですね。

吉 ええこと言ってくれますな。大山の「4番」は巨人の4番岡本に負けるような選手じゃないですわ。

矢 小さいところを目指しても、練習が面白くないです。もっともっと高いレベルでやってもらいたいです。やはり、3割、30本、100打点は基準として期待はしています。

吉 矢野監督が阪神にトレード移籍したのは、わたしが3度目の監督だった97年オフでした。横浜の大魔神佐々木(主浩)から、サヨナラ安打を打ったのを覚えています。

矢 あのトレードで人生が変わりました。一番のターニングポイントです。吉田監督の強烈な印象は、連敗中の巨人戦前の円陣で「さぁ、鼻歌歌っていきましょう!」と声を掛けられたことです。

吉 監督はコマを動かすのにさまざまなことを考えるものです。ぼくの後、野村、星野、岡田、真弓ら各監督のもとでプレーしたから今があります。

矢 当時は理解できなかったのですが、監督の立場になって、初めてすごいことやなと気付かされました。自分も選手に動いてもらいたいし、楽しむ気持ちでプレーしたほうがいい結果がでると思っています。また、三振して戻ったときに「下向いて帰ってくるな!」と怒られました。今、同じことを選手に言ってるんです。「三振しても、次打ったらええやんか」と。今は自分が仕えた監督に言われたことがよみがえってますね。

吉 さて、野手はセンターラインの確立がポイントです。捕手は梅野で、二遊間が糸原、北條ら若手に、上本、鳥谷もいる。新人木浪にも注目しています。

矢 センターラインが安定すると安心感がでてきます。ぼくのなかではまだ競争ばかりが頭にあって、シーズンが進んでいくうちに固まってくると考えているんです。