楽天ニュー安楽「球生きているほうが」卒剛腕で粘投

楽天対ソフトバンク 力投する楽天先発の安楽(撮影・足立雅史)

<楽天4-2ソフトバンク>◇12日◇楽天生命パーク

日本一球団相手に、新たなスタイルを証明した。楽天安楽智大投手(22)が今季2度目の先発で6回途中5安打2失点と粘った。17年6月30日のソフトバンク戦以来となる651日ぶりの勝ち星こそ逃したが、5回までは無失点とソフトバンクのエース千賀相手に堂々の投げ合いを展開。最速157キロを誇った高校時代のイメージから一転、140キロ前後の直球で差し込む「ニュー安楽」が勝利を手にする日も近い。

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連打と四球で無死満塁のピンチを招いて降板する安楽に、温かい拍手が注がれた。「序盤は良かったんですけどね。ランナーを出して代わってはダメですね。6回は投げきりたかったです。中継ぎの方々に申し訳ないです」。1死からマウンドに上がった3番手の青山が追いつかれる形となって反省が口をついたが、平石監督も「十分、十分。(5回まで)素晴らしかった。勝たせてやりたかった」とねぎらう投球だった。

剛速球への欲望に、しっかりとフタをした。直球はほとんどが130キロ台後半。力みなく投じたボールは打者を差し込み、ファウルでカウントを稼いだ。「スピードガンコンテストをしているわけじゃない。ガン(表示)が速くてもボールが死んでしまうより(ガンが出なくても)ボールが生きている方がいい。最終的に試合が終わった時に勝てていればいい」。対する千賀は1回に156キロを連発。7回14奪三振のパワー全開の投球を目の当たりにしても、口にしていた哲学が揺らぐことはなかった。

かつての剛腕とは、全く異なる姿。きっかけはオフに毎日の調整として取り入れた遠投中のふとした瞬間にあった。連日のトレーニングやランニングで体は「パンパンに」張った状態。力を入れている感覚がないのに、距離が伸びた。練習相手の堀内も「こっちの方が、ボール来てますよ」と同調。「(脱力状態の)ゼロから、リリースの瞬間に100にするイメージ。脱力が一番難しい。最初は難しくて、キャッチボールだったら何とか、という感じ。ピッチングもキャッチボールの延長を心掛けて、少しずつボールがいくようになって…」と振り返る。

大船渡(岩手)の佐々木朗希が国内高校史上最速163キロをマークした時のこと。「すごい投手だと思う。スピードには、夢がある。僕も今は出ないけど、ゆくゆくはこういうボールで150後半とかを投げられるようになれたらと思ってトレーニングしていますから」。決意を示した94球だった。【亀山泰宏】