<セCS第1ステージ:阪神0-2中日>◇第3戦◇20日◇京セラドーム大阪

 今季限りで辞任する敗れた阪神岡田彰布監督(50)は、試合後に選手全員に胴上げされ、号泣した。

 岡田監督が号泣した。あふれ出る涙をぬぐおうともせず、ナイン1人、1人が差し出す手をぐっと握りしめた。万雷の「岡田コール」が響き渡る京セラドーム大阪。5年間の監督生活の終えんは、涙に彩られた。

 壮絶なラストゲームだった。0-0の9回。守護神球児のストレートは、敵の4番に外野席まではじき返された。9回裏の攻撃はクリーンアップが3者凡退、前日2本塁打の愛弟子鳥谷が空振り三振に倒れてのゲームセットとなった。試合後、藤川には「最後は、お前で打たれてくれて良かった。お前で終わってくれて良かった…」。涙で声をかけた。

 「まあ1点でもとっていれば、か。(1死三塁となった)初回だったけどな。最後はもう抑えるとか打たれるとかじゃない。マウンドと打席の勝負。(球児を)送り出したんだから、何も言うことはないよ」。タテジマを着て口を開くのは、これが最後。しみじみと話した。

 「ゲームを積み重ねて、最後までという気持ちだったけどな。しょうがないわな。振り返れば、ずっと優勝争いして、昨年も一昨年も最後は勝てんかったけど、ある程度目指したチームはつくれたかな。短くはない、でもいつの間にか5年たっていたな。悔いがあるとすれば、展開が展開だったからかな。競っていれば、そうでもなかったんかも知れんけどな」。最大13ゲーム引き離しながら、まさかの大逆転負けをそうふり返った。

 8月下旬。父勇郎氏の命日(9月3日)が近づいていたが、毎年続けている墓参には出向かなかった。優勝して、おやじに報告する。悲壮な決意はかなわず、逆に、ユニホームを脱ぐことを決断した。

 監督室に戻ると、壁越しに、ファンの叫び声が聞こえてきた。現役時代のファンファーレ。かっとばせ岡田!

 コールに応えるようにドアを開けると、ナインが並んで待っていた。「監督、胴上げしましょう」。試合終了から20分後。マウンド付近で5度、宙に舞った。金本、関本、矢野…次々と握手を求められ、大泣きに泣いた。涙の終わり。阪神タイガース第30代監督は、負けても過去の誰も体験していない幸せな空間で最後の瞬間を迎えた。【町田達彦】