<コナミ日本シリーズ2012:巨人1-0日本ハム>◇第2戦◇28日◇東京ドーム

 巨人沢村拓一投手(24)が、日本シリーズ史上初の快挙を演出した。1回に2死球で招いたピンチを乗り切ると、8回まで3安打無失点に抑える快投で、長野の先頭打者アーチによる1得点を守り抜いた。先頭打者アーチによる1得点の勝利は史上初。沢村は中日とのクライマックスシリーズ(CS)第4戦でも6回無失点の好投を見せており、原辰徳監督(54)から「1ランク上がった」と評された。連勝の巨人は、明日30日に敵地・札幌ドームで第3戦に臨む。

 ドヤーッ!!

 沢村が、真っ向勝負を見せつけた。ヒーローインタビューをベンチで腕組みをしながら待つ。表情は変わらない。ただ、放つオーラからは自信と手応えが、たっぷりとにじみ出ていた。長野とともに上がったお立ち台では「とりあえず、思い切ってやるしかないと思って投げました」と、観客の大喝采を独占。最後は「あさっても勝つ!」と、CSに続くフレーズを口にして拳を突き上げた。

 己の信じた道を貫いた。打者29人に対し全108球。変化球は30球だけで、7割以上は直球勝負を挑んだ。8回、先頭の代打杉谷を迎えた。当然のように初球は144キロ直球。3球でカウント1ボール2ストライクと追い込むと、8球連続で直球を投げ込んだ。「真っすぐが良かったというか、内角の真っすぐを投げていれば打たれないと思った」と、途中、阿部のサインに首を振ってまでこだわり、最後も145キロ直球で空振り三振にきった。続く、1番陽、2番西川も連続三振に仕留め、今日一番の雄たけびを上げて役目を終えた。

 どこまでも大物ぶりを発揮した。初の日本シリーズ登板については「もっと、緊張したかった。いい意味でドキドキ感とか、もう少し緊張感が欲しかった」と、物足りなささえ示した。登板前日も余裕を漂わせていた。「僕は明日じゃないですよ」と、報道陣に対し平然とした顔で芝居を打った。レギュラーシーズンでは新人から2年連続2ケタ勝利を挙げ、堀内恒夫以来45年ぶり快挙も「大卒なので最低のライン」と、サラリと言ってのける。2年目らしからぬ言動の数々が並ぶ。

 それでも、大卒2年目らしさも垣間見た。1回にいきなり2死球を与えると稲葉の打席でけん制のサインミスを犯し、マウンドで阿部に頭をひっぱたかれた。その時ばかりは、スタンドからの失笑を浴びたが、それもまた沢村らしかった。

 少々の失態があったにせよ、大きな仕事をやり遂げチームを連勝に導いた。戦いの半ばで大はしゃぎをするわけはなく「勝っても、負けてもチームプレーなんで。ただ、自分が信じてやってきたことをやる。それを信じてやるしかない」と、真っすぐに前を見た。ふてぶてしくもあれば、頼もしくもある。それが沢村拓一だ。【為田聡史】