<楽天6-2オリックス>◇13日◇Kスタ宮城

 もう、塗り替える記録がなくなった。楽天田中将大投手(24)がオリックス打線を10安打2失点(自責1)に抑え、今季8度目の完投で開幕からの連勝を21に伸ばした。同一シーズンの連勝記録は、57年稲尾和久(西鉄)の20連勝を抜いて日本新記録を達成。昨季からの25連勝も、36~37年ハッベル(ジャイアンツ)のメジャー記録24連勝を超える“世界新記録”だ。チームに3連勝をもたらし、優勝マジックは「12」。最短Vは21日の日本ハム戦(札幌ドーム)で、田中が中7日で登板すれば胴上げ投手になる可能性も出てきた。

 花束と一緒に「21」と書かれた記念ボードを渡された。「神様

 仏様

 稲尾様」を超えるシーズン最多連勝をマーク。もはや抜く記録がなくなった。ナインからは握手でお祝いされた。当の本人は「ピンとこないですねえ」と素っ気なかった。理由は、いつもと同じ。「数字は後からついてくる。そこで、僕がぶれてはダメ。周りにもてはやされますけど、関係なく、しっかり投げればいい」と、発言もぶれなかった。

 だから、1点を失ったことを悔しがった。5-0の7回2死一、三塁、オリックス平野恵に中前適時打を許した。ベンチに戻ると、タオルを頭からかぶった。まるで、KOされたように。「完封しないとダメ。打線の援護があったから、やはり完封したかった」と繰り返した。点差があるから1点ぐらい、とは考えなかった。同じ轍(てつ)を踏みたくなかった。19勝目を挙げた8月30日ソフトバンク戦。最大9点リードをもらったが、6回、7回に3失点した後に降板。勝ちはしたが、流れを悪くし、中継ぎがさらに3点を失った。「同じことをしたらアカンと。まだまだ、そういうところが甘い」と自分を責めた。

 そうやって反省を繰り返しながら、21個の白星を積み上げた。その姿勢を、星野監督は「馬」にたとえた。「今の子は、言われてもやらない。俺らが辛抱強くやらせないと。川に連れて行くだけじゃダメ。連れて行って、口を開けて、無理やりにでも水を飲ませないといけない」と言った。だが、田中は違う。「将大は向上心が高い。ポケットに水を持ってるよ」と笑った。川に連れて行くまでもない。何も言わなくても、自分で考えて行動する男だ。

 最近2週間は、練習にフリー打撃を取り入れた。超一流アスリートだけが感じるわずかなフォームの違和感を見過ごさなかった。トレーニング担当の星コーチに助言を求めた。田中は「しっかり体を使わないと打球は飛ばない。下半身の力をうまく上半身に伝えたい。打撃は投球と一緒です」と理由を説明した。自ら考えてすぐに実践した。

 10連戦中の中継ぎを休ませるため、9回は望んでマウンドに上がり、今季8度目の完投を遂げた。マジックは12に減った。最短で21日の日本ハム戦で球団初優勝が決まる。中6日となる20日は試合がなく、田中が中7日で21日に先発する可能性は十分ある。「記録を伸ばすためにやっているわけじゃないです。日本一を目指すため、やっています。1戦1戦、戦って、まずはリーグ優勝できるように」。シーズン無敗での胴上げ投手へ-。伝説の男のクライマックスとなるマウンドが待っている。【古川真弥】

 ▼田中が開幕21連勝。1シーズンで21連勝は57年稲尾(西鉄)の20連勝を上回るプロ野球新記録となった。シーズン21勝は08年岩隈に並ぶ球団最多タイ。これで6月9日巨人戦から14戦14勝となり、03年斉藤(ダイエー)しか記録していない15戦15勝まであと1勝。

 ▼楽天は8月23日ロッテ戦からKスタ宮城で1分けを挟み8連勝。本拠地8連勝は08年3~4月、10年4~5月に並ぶ球団最多タイとなった。優勝マジックは12で、現日程の最短優勝決定日は21日。

 ◆大リーグ記録超え

 田中は昨年8月26日日本ハム戦から25連勝。シーズンをまたいだ25連勝は自己のプロ野球記録を更新し、大リーグ記録の24連勝(36~37年カール・ハッベル=ジャイアンツ)を上回った。