日本ハム中田翔内野手(24)が網走監獄パワーを注入した。28日、応援大使を務める網走市を訪問。名所の「博物館網走監獄」では約45分間の滞在中、職員に質問攻めするなど興味津々だった。予定時間内にすべての展示物を見られず「優勝して、また遊びに来たい」と“V旅行”での再訪を口にするほど、好奇心を刺激された。

 中田が日本最北端の監獄の歴史に足を踏み入れ、驚きと感動が止まらなかった。初めて訪れた「博物館網走監獄」。明治期の監獄施設がそのまま残されている全国でも珍しい施設に、好奇心のツボが刺激された。この日、網走の日中の最高気温は1・8度。そんな極寒も忘れるほど、心を奪われた。「本当に楽しかった」。見るものすべてが新鮮だった。

 かつての過酷すぎる環境を知れば知るほど、琴線に触れた。まず、興味を持ったのが3~5人が収容されていた雑居房。「これ、中に入れますか?」。ハートに火が付いた若き主砲は、誰にも止められない。ともに応援大使を務める谷口を誘って果敢に潜入。部屋の中を見て「この柱の傷とか、つめでひっかいてんのかな?

 本物やから生々しいな」。感受性豊かな日本代表の4番。当時の囚人たちの厳しい環境に思いを巡らせた。

 さらに館内を進んでいくと、1体のマネキンを頭上にみつけた。「あれが脱獄犯で有名な白鳥由栄(よしえ)です」(同館職員)。戦前戦後に4度も脱獄した世紀の脱獄犯の再現シーンだった。近くまで寄って、まじまじとみつめた。「すごすぎるな…」とポツリ。すぐさま「これ、誰も気づかなかったんですか?」と当時の状況を知りたい欲求は、止まらなくなった。

 ここから質問攻めが続いた。「寒くて亡くなった方もいるんですか?」「ここは何人入れるんですか?」「これは何に使っていたんですか?」…。知らなかった現実を目の当たりにして「いや~すごいね」。さすがに言葉がみつからなかった。「今との違い、差にびっくり」。実は午前中に現在の網走刑務所に立ち寄っていた。この日の行程には入っていなかったが、急きょ中田が希望して外から見学することに。きれいな外観を見ていたからこそ、かつての苦しさが伝わってきた。

 あっという間に予定された45分が過ぎた。東京ドーム3・5個分の広さの同施設は、一部しか見ることができなかった。「すべて回ってみたい」と、興味は尽きない。この日は、小学校、市役所訪問から網走監獄、オホーツク流氷館に最後は網走市民と交流も図った。「網走の方も優勝しないと喜んでくれない。優勝して、また遊びに来たい」。プライベート“V旅行”での再訪に思いをはせた。【木下大輔】

 ◆博物館網走監獄

 明治時代から網走刑務所で使用されてきた建物を保存公開している歴史屋外博物館。1983年(昭58)に開館。敷地面積は東京ドーム3・5個分に相当する。展示施設は、1891年(明24)に建築された鏡橋の再現構築や、移築復元された獄舎の五翼放射状舎房など。4~10月は、網走刑務所の収容者が食べているメニューを再現した監獄食を提供し、監獄食A(焼き魚がさんま)700円など。年中無休。入館料金は大人1050円など。所在地は網走市呼人1の1。