豪華な授業参観だった。ソフトバンク川原弘之投手(22)が4日、王球団会長と秋山監督、OBの工藤公康氏(日刊スポーツ評論家)によるチェックを受けた。日本人左腕最速158キロを誇る未完の大器。B組ブルペンに名球会トリオが集結し、期待の大きさが表れた。工藤氏はフォーム安定の鍵を「ベタ足」と分析した。宮崎キャンプは第1クールが終了した。

 普段は注目度の低い2、3軍用のブルペンに重鎮が居並んだ。川原の後ろには王会長と秋山監督、ブルペン捕手の背後では工藤氏が1球ずつフォームを凝視。途中で王会長から「5割、6割の力で投げなさい」と脱力を勧められた川原は「3人に見られて力が入りました」。今キャンプ最多141球を投げ込んでいた。

 2年前のキャンプでも熱烈アドバイスした工藤氏は成長の跡を見てとった。

 工藤氏

 3年目のキャンプに比べ、下半身のブレ、上半身のあおりがなくなっている。こまのように回る感じがでてきた。ただ階段をいきなり2歩、3歩飛ばしては進めない。練習で1歩1歩昇るものだから。

 同じ左腕でも、川原は最速158キロ。規格外の体とそれに見合う筋肉を備える。これを排気量の大きな車に例えながら、1軍入りするための課題を指摘した。

 工藤氏

 排気量が大きい車は操るのが難しい。サスペンションや接地面がしっかりしないと。1つ1つのパーツが連動してこそ操れる。後ろから見る限り、彼は踏みだし足がつま先から入るので、ベタ足した方が安定する。つま先で片足立ちするとぐらつくのと一緒。これではリリースポイントが変わり、18・44メートル先ではボール2個、3個分ずれる。排気量の大きな体が精密に動くには下半身の安定感が必要。(力を抜いて)膝から先を捨てるくらいでいくといい。

 力の抜き具合に苦戦する川原は助言をもらうと、ブルペンでシャドーピッチングに取り組んだ。「シャドーではベタ足ができたので次のクールでも繰り返していきたい」と言った。

 工藤氏

 打たれる、抑えるは、投げた後の結果。まず直球も変化球も、いつでもストライクを取れるという自信をつければいい。

 川原は過去4年で1軍3試合に登板し、未勝利。ブレークのきっかけは足の裏にあり。話題は大型補強ばかりではない。工藤氏は「B組の層も厚い」と未完の大器が眠るB組の視察に時間を割いた。【押谷謙爾】

 ◆12年春キャンプでの工藤氏

 川原の素材を絶賛しつつ「足の置き方をプレートと平行になるように」と軸足のズレを指摘。最初から最後まで力が入ったままのフォームに「足の上げ方のタイミング」を指導することによりフォームの強弱がついた。ブルペンで指導し昼食後には工藤氏が正面に立ちシャドーピッチングをチェックする「補講」も行った。