<楽天1-8日本ハム>◇25日◇コボスタ宮城

 日本ハム中田翔内野手(25)が、自身初の満塁本塁打で逆転勝ちに導いた。1点を追う6回1死満塁、楽天塩見から16号を右翼スタンドに運んだ。プロ7年目、通算95本目で初のグランドスラム。足の故障で指名打者が続く主砲の一撃で、チームは連敗を3で止め後半戦初白星。再び勝率を5割に戻した。

 奮い立つ舞台を独り占めした。主役は悩める主砲中田だ。1点を追う6回1死満塁。前打者の陽岱鋼がお膳立てした四球で、読み切った。初球。138キロシュートを振り抜き、汗粒を飛ばして走った。スローモーションのような右翼席下段へ突っ込む打球を、目で追いかけた。「入るんかな」。プロ7年目、通算95本塁打目で初のグランドスラム。「初なの?

 良かった」。眉間のしわは消え、ニヤリとほくそ笑んだ。

 チームを救うヒーローになった。今季16号は逆転、決勝満塁弾。パ・リーグ打点王を独走する60打点目のおまけ付きだ。栗山監督は「主役が来ないといけない」と一振りを称賛した。首位オリックスに3連敗で始まった後半戦。この日は敵地、楽天星野監督の復帰戦で異様ムード。マイナスな状況も自身の「後半戦1号」で味方にした。中田は「勝つのが仕事だから」と淡々と、力強く仕事をした。

 壁の連続だった。5月上旬からは右太もも裏の痛みに苦しむようになった。詳細は公表されていないが軽度の肉離れとの情報もある。当初はDHでの出場を提案されても「守備に就かせてください」と直訴。今季は投手中心の大谷の定位置となるDHを奪う自分を許せなかった。追い打ちを掛けるように6日ロッテ戦の死球で、左膝の骨挫傷を負った。骨折より長引く場合が多いとされる負傷にも見舞われた。

 両脚の激痛との付き合いが始まった。5月5日ソフトバンク戦で今季初めてDHで出場。その後も21試合で守備に就かなかった。満足に走れない姿を「怠慢プレー」と取られることもあった。極秘で定期的に病院で精密検査。24日の大阪からの移動休みも患部のチェックに充て、回復を願った。「オレの体のこと、わかってんのか」。苦悩をため込み、ひたすら向き合ってきた。

 追い風は吹き続ける。今日26日の楽天戦から定位置の左翼での出場が濃厚。後輩の大谷の10勝目が懸かる一戦で、本来のプレースタイルで戻ってくる予定だ。「(足は)徐々に良くなっている。また左翼の守備に就いて、もっと打撃を上げていきたい」。壁を1つ乗り越えた。たくましく進化を遂げていく。【田中彩友美】

 ▼中田が自身初の満塁本塁打を放ち、東映などの前身時代も含め球団史上160本目(81人目)となった。球団史上最多の満塁アーチを放っているのが張本勲で7本。続いて田中幸雄が6本。5本が吉田勝豊、大杉勝男、島田誠、古屋英夫、高橋信二の5人。現在の在籍選手では稲葉の3本が最も多い。今季は5月29日ヤクルト戦(神宮)の近藤以来、チーム2本目。