花は桜木、男は泰示-。巨人大田泰示外野手(24)が15日、漫画ドカベン「岩鬼正美」級の豪快アーチを放った。宮崎キャンプ最終日の紅白戦で白組4番に座り、3回1死一塁、新助っ人右腕マイルズ・マイコラス投手(26=レンジャーズ)のスライダーに反応。人気キャラクターをほうふつとさせる一撃をバックスクリーン右に運んだ。川相ヘッドコーチが「岩鬼のようになってほしい」と願望を込める大砲。チーム屈指の野性味を帯びる男が、新成巨人のクリーンアップ候補に名乗りを上げた。

 「グワァラゴワガキーン!」。衝撃音が響き渡った。3回1死一塁、大田が描いた放物線はバックスクリーン右に入った。「ドカベン」の岩鬼をほうふつとさせる中堅方向への豪快弾。「打席の中でいつも意識していることができたのが良かった」。岩鬼のように筋骨隆々の体を揺らしながらダイヤモンドを回った。

 「花は桜木、男は泰示」。岩鬼の座右の銘のように、ファーストストライクからガンガン振った。5回の第3打席。ファウルでタイミングを合わせながら、右越えの二塁打を放った。バットを体の内側からしならせ、押し込めたから、逆風も関係なかった。打席に立つ度、拍手が起こった。本家のように「何かを起こす」期待感の表れだった。

 グラウンドでの大声、豪快さと意外性、そして愛されるキャラクター。どこにいても、一瞬で分かる存在感は、川相ヘッドコーチにも野球漫画を代表する名キャラを連想させた。「岩鬼のようになってほしい。悪球打ちじゃないけど、思い切ってやってほしい。野性味を出してね」。荒々しくあれ-。その代名詞が「男・岩鬼」だった。

 2つの重圧にも勝った。試合前、スタメン表の名前をふと見た。「白組・4番大田」。3試合目で初めて、レギュラー組の4番を任された。阿部、村田が続く打順。「びっくりした」と言うが、「4番って考えてしまうと、プレッシャーになる」と遮った。ネット裏には長嶋終身名誉監督。力む場面でも、打席に集中した。

 試合後、かつては「山田太郎」に憧れを抱いた阿部が中井ら若手に叫んだ。「明日の1面は泰示。しゃべっても、記事は泰示だぞ」と認めた。キャンプ前、原監督は大田について「クリーンアップの一角を打ってくれれば、という願望を持っています」と話した。紅白戦3試合で5割、1本塁打、4打点。巨人の4番を“岩鬼”と“山田”が争う可能性も浮上した。

 大活躍にも、岩鬼のような大ごとは言わなかった。「もっと正確性を上げないと。スタメンを任される選手になるには、まだまだ足りないです」と引き締めた。原監督は「必要以上に褒めることはない。少しでもプラスになれば」と多くを語らなかった。岩鬼は1番が定位置だが4番の経験もある。巨人打線の“顔”に大田が挑戦する。【久保賢吾】

 ◆岩鬼正美(いわき・まさみ)不朽の野球漫画「ドカベン」の登場人物の1人。柔道から野球へ転じ、明訓高へ。「グワァラゴワガキーン」という規格外の打球音で、悪球を意に介さずバックスクリーンまで運ぶ。非常に勝負強く、幾度となくチームの窮地を救った。中学2年生時に身長190センチをオーバー。希代の豪傑であると同時に仲間思いであり、乱闘が起こると真っ先に飛び出していく。