広島に「横山2世」が誕生した。ドラフト2位の亜大・薮田和樹投手(22)が25日、広島市南区のホテルで両親と入団交渉に臨み、契約金7000万円、年俸1000万円で仮契約を結んだ。背番号は今季引退した横山竜士氏(38)の「23」に決定。「ぼくも10年、15年と息の長い選手に」と大先輩に続く意気込みだ。

 言葉を話す前からカープファンだった22歳が、晴れて赤ヘル軍団入りした。広島生まれの広島育ち。元祖カープ女子の母昌美さん(47)に抱かれ、兄と一緒に1歳から薮田は旧市民球場に通った。球団歌「それ行けカープ」は、子守歌。自分で球場通いを始めてからは、当時主砲の金本のとりこになった。「だれよりも(打球を)遠くに飛ばせる選手だったし、チームの4番。大好きでした」。KANEMOTOのユニホーム、球団グッズを夢中で集めた。赤い帽子も大事なコレクションだった。

 その帽子をこの日、スカウトの手でかぶせてもらった。「小さなころからの夢がかないました」。交渉に同席した昌美さんも感無量だった。タクシーの運転手をしながら薮田を育てた母は「これからもっともっと苦労して『広島の薮田』に成長していってほしいです」。大きく育った愛息子を見守った。

 岡山理大付では右肘の疲労骨折に苦しんだ。故障の影響もあり、亜大では遅咲き。3年春のリーグ戦・駒大戦でいきなり151キロをマークし、周囲を仰天させた。だが4年春のリーグ戦前に右肩痛を発症し、今年の春秋リーグ戦は登板できず。3年春のリーグ戦2試合、同春の全日本大学選手権1試合が亜大での全キャリア。それでも最速151キロの速球、練習試合で試したフォークなどきらりと光る才能に可能性を見いだし、カープは2位で指名した。

 背番号23の先輩、横山氏がそうだったように、タフな投球を期待される。「横山さんはどのイニングを任されても、仕事を全うされた投手。自分もそうなりたい。少しでも早く1軍に上がり、10年、15年と息の長い選手になりたい」。カープ女子が生み、育てたコイの新星が「23」の歴史を受け継ぐ。【堀まどか】

 ◆薮田和樹(やぶた・かずき)1992年(平4)8月7日、広島県生まれ。岡山理大付-亜大を経て14年ドラフト2位で広島に指名された。長身から投げ下ろす直球とフォークボールは威力十分。188センチ、82キロ。右投げ右打ち。