大谷よ、あとは俺に任せろ! 侍ジャパンの4番候補、DeNA筒香嘉智外野手(25)が、宜野湾市立野球場のスコアボードを破壊した。3日、フリー打撃で10発の柵越えをマーク。その1球が推定135メートルの飛距離で、スコアボードに直撃した。オフからこん棒バットを導入してパワーアップを図った成果が出た。大谷が打者でもWBC欠場が決まったが、その不安を振り払うかのような一撃だった。

 鬼のような筒香の打球が、右中間に飛んでいった。ライナー性の軌道で直撃したスコアボードを破壊。そこから4連発放ち、場外2発を含め10発の「柵越えショー」を終えると、スタンドのファンから拍手が降り注いだ。ヘルメットのつばをつまんで軽く会釈。「今日は風が強かったから飛んだんじゃないですか。拍手を頂くのは、うれしいしありがたいですね」と謙遜しながら喜んだ。

 鬼に金棒ならぬ「筒香にこん棒」の成果だった。オフの自主トレで、ヘッドからグリップまで同じ太さのこん棒バットを導入。通常のバットよりも芯が中央にあるため、前で球を打ってしまうと芯を外し、飛ばないつくりになっている。だから「引き付けて打たないと球が飛ばない。軸回転でバットを振れるようにするため」と明かしていた。体の軸をぶれさせずバットを振ることを意識づけさせる秘密兵器を、キャンプ初日と2日目にも振り込んでいた。

 球を引き付けて打つことは、世界一奪還を狙うWBCにつながる。手元で動くムービングボールが主流の外国人選手の球を捉えるには、いかに球を見るかがカギになる。手元まで引き付けて球を見る時間が長くなるほど、バットに当たる確率が上がる。「体の使い方はうまくまとまってきたかな」と手応えは感じている。侍ジャパン4番筆頭候補のレベルアップは、そのまま日本のチーム力アップにつながる。

 この日、大谷がWBCの出場を見送ることが決まった。日本の主軸を担うはずだった仲間の離脱に「残念なことですけど、大谷選手にはこれからの野球人生がある。本人が一番難しい決断だったと思う。僕らのやることは変わらない。こうなってしまったことはしょうがない。残りのメンバーで、世界一へ頑張りたい」。大谷の分まで打つ覚悟だ。二刀流の若き侍はいなくなったが、日本には鬼のような破壊力を持つ筒香がいる。【栗田成芳】

<主なスコアボード破壊弾(※球場は全て横浜スタジアム)>

 ◆96年巨人松井 8月15日横浜(現DeNA)戦、7回1死二塁から斎藤隆のスライダーをはじき返すと打球は一直線。スコアボード上の「ローズ」の「ロ」の字を直撃し電球を破壊。

 ◆09年巨人阿部 9月9日横浜(現DeNA)戦で吉見からバックスクリーン弾。直撃後、電光掲示板に黒い線が入るなど映像が乱れるアクシデント。

 ◆15年ソフトバンク柳田 6月3日DeNA戦、三浦が投じた131キロのスライダーをフルスイング。推定150メートルの特大弾でスコアボード上部に直撃し電球を破壊。ビジョンが一部映せない状態になった。

 ◆16年日本ハム大谷 移動日の6月22日、フリー打撃で特大弾を放つとバックスクリーンへの打球はスコアボード上部に直撃。前年柳田の推定150メートル弾から左に約5メートルの位置へぶち当てた。