ミスタープロレス天龍源一郎(65)が、両国国技館で行われた引退試合で、40年のレスラー生活に別れを告げた。

 天龍の1人娘で、天龍プロジェクト代表の嶋田紋奈(あやな)さん(32)は、父の最後の勇姿を花道で見届けた。引退試合に国技館を用意したのは紋奈さんだった。今年2月、天龍が引退発表会見を行った直後、両国国技館に連絡を入れた。天龍のプロレスデビュー40周年となる11月13日以降で空いている日と申請したが、最初は空きがなかった。それでも、キャンセルを信じ、仮押さえの申請書を何枚も出した。執念が実り、15日の実施が決まった。

 当初天龍は「新宿FACEや、新木場でやってる団体が、国技館なんてやめてくれ」と反対。しかし、紋奈さんは、プロレスのことで初めて天龍に反抗した。「イヤだ。私はやりたい」。相撲からプロレスに転向した父が、断髪式を国技館でできなかったことも知っていた。「プロレス人生の最後に、ベストなページを用意したかった。あとは、天龍が最高のドラマを描いてくれる」。

 中学生のときからWARでリング設営や、グッズ販売を手伝った。子どものころからあこがれの存在だった父天龍。献身的に支える母親の姿を見て、家業を手伝うのはごく自然の流れだった。10年4月、天龍が最後のプロレス団体として天龍プロジェクトを興すと、その代表に指名された。それから5年、天龍の故障欠場、母まき代さんの乳がんや心不全などの病気など、苦難の中、団体を1人で切り盛りしてきた。気性や言動もいつか父親似になり、関係者には女天龍と言われる。

 「プロレス部門はなくなるけど、会社は続く。1週間休んだら、また馬車馬のように働いてもらいます」。紋奈さんは、引退した父親が老け込まないよう、しっかりと心配りもしていた。【桝田朗】