10年間不敗、5年間ベルトを保持してきた王者ジェイミー・マクドネル(32=英国)は「怪物」井上尚弥(25)の強さを素直に認めた。

 「パンチは本当に強かった」「地球上で一番強い男と試合ができた」「素晴らしいファイター」。試合後の控室では憔悴(しょうすい)しきった表情でインタビュー時間も5分と制限されたが、賛辞を述べた。

 試合プランは後半勝負だった。「まず始めの数ラウンドは様子を見て、(井上の)トルネード(台風)を避け、その後に攻めていこうと思っていた」。初回から攻勢出てくると想定はし、そのための練習も積んできたと言うが、井上の詰め方、プレッシャーのかけ方は想定外だった。「とらえられてしまった。流れに乗ることができなかった」と決定打を許して、マットに沈んだ。

 無効試合となった昨年11月の試合を最後に1階級上のスーパーバンタム級に変更する予定だったが、井上と戦う機会を「チャンス」として日本行きを決めた。ただ、前日計量では1時間10分ほど遅刻し、その姿は明らかな体調不良。足元がおぼつかなく、計量後には脱水症状も起こした。

 この日の試合直前の計量では前日より12キロと大幅増の65・3キロ。当人は「バンタム級最後の試合として最高に作り上げてきた」「ここ10年はバンタム級でやっている。減量法は変えていない」と言い訳はしなかったが、陣営のハーン氏は「99%のボクサーが彼のような減量は乗り越えられないと思う」としたように、従来とは違った過酷さがあったと思われる。