プロ格闘家でK-1、HERO's、UFCなどで活躍した日本を代表するファイター、山本“KID”徳郁さん(本名岡部徳郁=おかべ・のりふみ、旧姓山本=KRAZY BEE)が18日、胃がんのため療養中のグアムの病院で亡くなった。41歳だった。

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激しいファイトで格闘技ブームを起こした「神の子」は子供思いだった。日刊スポーツでは06年4月23日、その時の旬の人を紹介する「日曜日のヒーロー」のコーナーでKIDさんをインタビュー。自らの子供、そして子供をめぐる問題について語った。

当時、長男の海鈴くんが3歳、次男の愛郁くんが1歳。毎朝、車で保育園まで送った。試合で勝った時はいつもリングで抱き上げていた。「家族のためなら死ねる」。てらいもなく言い切った。

今も問題が続く幼児虐待についても言及。「うちの子供には不自由はさせてない。いいところに行って、いいものを食わせて、いい服を着させる。だけど、(幼児虐待などの)ニュースを見ちゃうとね。もしオレが(プロで成功する前の貧乏時代のように)ろうそくで暮らしてたら、オレもストレスをためて、子供に害を与えたかもしれない」と加害者のことまで考えをめぐらせた。

子供をめぐる問題の解決策としては社会保障の充実を訴えた。「国は、まず第一に子供にお金を使ってほしい。貧しかったり、共働きで子供を育てられない夫婦をサポートするとかね。お金お金は良くないかもしれないけど、お金は満たされるから。援助があれば、子供に被害はいかないでしょ」。強さだけでなく、子供への優しさ、そして社会問題を真剣に考える一面もあった。【田口潤】