大相撲九州場所10日目に、横綱白鵬が関脇栃煌山に2度の猫だましを繰り出した。寄り切って10連勝としたが、日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)は「横綱としてやるべきことじゃない」と指摘した。本来、猫だましは、小兵が活路を見いだすための「奇襲」でもある。

 現役時代、技のデパートの異名を取り、何度か猫だましを駆使した元小結のNHK大相撲解説者の舞の海秀平氏(47)に話を聞いた。

 -白鵬戦を見てどう思ったか

 栃煌山は白鵬にとって決して好きな相手ではありません。真っ向から行って、下手を差せない、上手も取れない状況になって、押し込まれるのを嫌がったのではないでしょうか。それで(相手の出足を止める猫だましを)考えたのかもしれません。

 -理事長は、横綱の猫だましに否定的だが

 横綱としては(相手を)受け止めて欲しかった、というのはありますが、1つの話題作りとして、白鵬流のユーモアが若干あるんじゃないでしょうか。白鵬にすれば、ファンサービスかもしれない。

 -栃煌山は、猫だましは頭になかったと言っている

 栃煌山は真っ向勝負に行きますが、横綱も真っ向勝負に来るとは限らない。日本人は子供のころから、相撲はこうだと教えてもらってきた。勝負の感覚が違うんです。ですから、想像力を働かせて欲しかった。猫だましは、相手をよく見れば食わないんですよ。横綱といっても人間ですから、横綱相撲をかなぐり捨てても、勝ちたいと思って、ああいう立ち合いになることもあります。

 -舞の海さんも現役時代は猫だましを駆使した

 私はどうしても勝てない相手に対して、どうしても勝ちたいという気持ちでやった。

 -小兵の舞の海と、横綱がやるのとでは意味が違うか

 ファンが、お客さんが消化不良で、納得しないところもあるでしょう。ガチッと挑戦者を受け止めるのが横綱。他のスポーツなら、勝てばいい、金メダルを取ればいいんです。ですが、大相撲はスポーツというより、伝統文化的な側面がある。人々の見方があって、発展してきましたから。誰がやるか、にもよりますね。小さい人が変化しても拍手が起きますが、大きい人が変化すると批判される。大相撲独特の文化なんです。

 -是か非かの議論は尽きないが

 よく分かります。いろんな見方で楽しむのも大相撲ですから。世の中にいろんな問題があるのと同じです。土俵上は曼荼羅(まんだら)ですから。

 -白鵬は11日目に稀勢の里戦。どういう立ち合いになると思うか

 2回続けて猫だましではしゃれでなくなる。がっちりぶつかっていくんじゃないでしょうか。