モンゴルの怪物が戻ってきた。西前頭4枚目の逸ノ城(24=湊)が横綱稀勢の里を寄り切り、昨年夏場所以来4個目の金星を獲得した。中日8日目を1敗で折り返すのは新入幕で優勝争いを演じた14年秋以来の快進撃だ。稀勢の里は今場所4個目の金星配給となる4敗目。横綱白鵬は自身の最多記録を更新する44度目のストレート勝ち越しを果たした。全勝はただ1人で、1敗で逸ノ城ら平幕3人が追う。

 けんか四つ。横綱の左を封じて差し手争いで勝ったのは逸ノ城だった。先に突き放し、もろ差しになったのも逸ノ城だった。体重205キロの体で前に出る。稀勢の里に力なく土俵を割らせた。だから、第一声は「びっくりした。いつもの横綱じゃなかった」。では、金星にも複雑な心境か-。その問いに「勝ちは勝ちなんで」と無邪気に笑った。

 1敗で折り返すのは13勝した新入幕以来。「モンゴルの怪物」と呼ばれた当時は、試みるダイエットになぜか反比例して、体重が214キロまで増えた。その重さが昨年夏、腰に激痛を走らせた。左半身がしびれ、真っすぐに歩けない。痛みで食事どころでなく、体重も本格的に減らした。「昼は茶わん半分。夜は食べない」。大好きな菓子もなし。186キロにまで減った。

 軽ければ動ける-。それは勘違いだった。「やせればいいもんだと思っていた。やせたけど筋肉もなくなった。力が出ない」。思うように勝てず、ストレスもたまる。だから、減量はや~めた。「肉はたくさん食べた。ステーキなら1キロほど。もうちょいいけるけど、これくらいがいい。甘い物も食べたいときは普通に食べる」。ただ、間食はしない。メリハリ重視。だから、体重は変動しない。筋肉のよろいを戻した「この体重がベスト」と言った。

 稀勢の里とは、初優勝を決められた初場所以来の対戦。あれから「自分が一番若いと思っていたら、自分より若手が上で活躍している」。その悔しさを原動力に、年始めの借りを年納めで返した。逸ノ城には、やっぱり200キロ超の体が似合う。【今村健人】