大相撲の横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)による、平幕貴ノ岩(27=貴乃花)への暴行が、ついに国際問題に発展する可能性が出てきた。モンゴルの大統領特使を務める、元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(37)が、今回の問題をバトトルガ大統領に報告したことが23日、関係者の話で分かった。日本とモンゴルの友好関係への影響を懸念し、同大統領は今回の件で、安倍晋三首相と話し合いの場を持ちたい意向を持っているという。角界の枠を超えた展開に突入した。

 日本との関係を担当する大統領特使を、8月から務める元朝青龍が動いた。モンゴル政府に近い関係者によると、日馬富士による暴行問題について、すでにバトトルガ大統領に報告していることが判明。元朝青龍は16日に日本語で「ビールびんありえない話し!」(原文まま)とツイートし、日馬富士のビール瓶を使った暴行を否定するなど、今回の問題に強い関心を示していた。今回は日馬富士、貴ノ岩ともにモンゴル人による問題。相撲界だけでなく、日本でモンゴル人が敬遠されることを懸念し、大統領に忠告したという。

 現地では連日多くのメディアが、今回の問題を報じている。日本でモンゴル人力士への風当たりが強いという報道も少なくない。関係者は「バトトルガ大統領は、相撲がモンゴルと日本の友好関係に大きく影響していると思っている」と話し、今回の問題を発覚当初から軽視していなかったという。大統領自身、格闘技サンボの元モンゴル代表でモンゴル柔道連盟の会長を務めるなどスポーツ、特に格闘技への理解がある。

 そんな状況下で、元朝青龍から報告を受けた。関係者は続けて「大統領は安倍首相と今回の件で話し合いの場を持ちたい意向のようです」と明かした。トップ自ら問題の沈静化と友好関係維持に努めたい考えだ。

 今月いっぱいまで日本の外務省が公表している主な外交日程として、安倍首相をはじめ、政府要人がモンゴル政府と接触する予定はない。だが12月以降、アジア各国が集まる会議をはじめ、さまざまな可能性を模索して接触を図るとみられる。一方の日本政府も、菅官房長官が問題発覚翌日の15日に、政府としての立場としてのコメントは控えたが、迅速な問題解決を求めていた。日本相撲協会の枠を超えて警察、さらには国家間へと広がる様相を呈し始めた暴行問題。今後も思いがけない余波を引き起こす可能性を秘めている。

 ◆日本とモンゴル 1972年2月に国交樹立。日本からの経済援助などで良好な関係となり、大相撲では92年春場所で旭天鵬ら初のモンゴル人力士6人が誕生した。これまで60人が入門し、4横綱1大関を輩出している。