横綱白鵬(32=宮城野)が、前日11日目の黒星を引きずらずに、関脇御嶽海を下した。この日、11日目の嘉風戦で敗れた際に立ち合い不成立をアピール、前代未聞の不服の態度を示したことについて、審判部に呼び出されて厳重注意を受けたが、しっかりと反省して嫌な流れを断ち切った。平幕の北勝富士と隠岐の海の八角部屋コンビが、1差で白鵬の背中を追いかける。

 十両土俵入りが始まる前の午後1時55分。通常よりも1時間以上早く場所入りした白鵬は、真っ先に審判部へと向かった。伊勢ケ浜審判部長代理(元横綱旭富士)、藤島(元大関武双山)、山科(元小結大錦)同副部長の前で謝罪し、11日目の嘉風戦での行為について厳重注意を受けた。約3分後に退室した白鵬は、表情一つ変えることなく支度部屋へ入っていった。

 完璧な立ち合いで、左を差して右上手を取って寄り切った。「いつもの感覚という気持ちで土俵に入った。引きずってなかったんじゃないかな」と冷静な表情。名古屋場所で負けたことも、引きずらなかった。審判部室でのやりとりについては「昨日のことでちゃんと説明を受けた。自分も納得した。今後気をつけます、と話した」と明かした。そして「ファンのみなさんも、ああいう相撲を見たくないでしょうし、だから(ビデオを)見てほしかった。申し訳ない」と問題行動を起こした理由を説明した。

 11日目の打ち出し後に苦言を呈した八角理事長(元横綱北勝海)は、横綱の品格の磨きに期待した。「39回優勝しているけど、まだ修行の身ということ。こうやって頭をぶつけて人間的にも成長していくんじゃないかな。失敗したけど大きくなるチャンス」とエールを送った。

 40度目の優勝に一瞬、暗雲がかかったと思われたが、しっかりと吹き飛ばした。しかし、横綱の品格に傷がついたのは間違いない。日馬富士の暴行問題があっただけになおさらだが、せめて優勝という結果で横綱の責任を全うする。【佐々木隆史】