東前頭筆頭北勝富士(25=八角)が、横綱白鵬(32=宮城野)を初めて破り4場所連続で金星を獲得した。99年夏場所の元関脇土佐ノ海以来、昭和以降では2人目の快挙。元横綱日馬富士関の暴行事件や式守伊之助のセクハラ行為など、不祥事が続く角界を明るい話題で照らした。

 支度部屋に戻った北勝富士は、満面の笑みを浮かべた。横綱初挑戦だった17年名古屋場所で鶴竜、秋場所で日馬富士、九州場所で稀勢の里を破ったが、白鵬には取組前まで2戦2敗。唯一勝てなかった横綱をついに破った。「大相撲界の歴史を塗り替えた人。自分の中では一番の相撲」。感無量だった。

 立ち合いで優位に立った。先に手をつけたが、北勝富士の真っすぐ頭から突っ込む立ち合いを嫌ったのか、白鵬は手をつけられない。「少しでも意識してくれたらうれしいです」。2度目で成立。先に踏み込み、両脇を締めて差されるのを防いだ。頭に浮かんだのは2敗した相撲。「2回連続でかわし気味に来られて上手を取られましたから」。まわしを取らせないよう、腕をがむしゃらに伸ばしながら前に出た。引いたのは白鵬。その隙を見逃さずに一気に押し出した。「どんな相手でも引けば軽くなる。理想通りの相撲でした」と納得顔だった。

 北勝富士が中学生の時から横綱だった白鵬は「尊敬する人」だった。気が付けば同じ時代に、同じ土俵の上で相撲を取っている。「小さい頃から相撲をやってきての夢。誰もが目標に掲げる人」。だからこそ4つの金星の中でも「一味も二味も違う」と、少年のように無邪気に笑った。

 昨年九州場所後にはあまりの強さに「ラスボスですよ」と、ゲームに例えるほど差を痛感していた。ただ、これで“クリア”ではない。序盤の横綱3連戦を終え、白星はこの1つのみ。今年の初白星が白鵬からで「夢物語ですね」と浮かれたが「勝ち越さないと意味がない」と、謙虚な気持ちをすぐに持った。目指すは初三役。昭和以降2人目の4場所連続金星を無駄にせず、残りの12日を無心で取り切る。【佐々木隆史】