9場所ぶりの皆勤を目指す横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、先場所優勝の関脇御嶽海を破り、9勝目を挙げた。27秒3の大相撲の末、苦しみながらも寄り切った。元横綱日馬富士を抜き、歴代単独6位の幕内通算713勝目。今日13日目は横綱白鵬と対戦する。横綱に昇進した昨年3月の春場所から1年半、両者の対戦はなかった。両雄が横綱同士として初対戦する。

万全の形になるまで27秒3を要した。稀勢の里が左を差して右上手を引き、土俵際に追い詰めると、身動きの取れない御嶽海から一発逆転を狙う気力さえも奪った。観念したように静かに土俵を割らせた。7月の名古屋場所で初優勝した若手を、じっくりと攻めて、経験の差を見せつけた。今場所9勝目は日馬富士を超える幕内通算713勝目。先場所まで8場所連続休場だけに、疲労を問われたが「あと3日ですから」と意に介さず。落ち着いて取れたか尋ねられ「まあそうですね」と静かに語った。

これで9勝目。引退危機回避に近づいた。年6場所制となった1958年(昭33)以降の横綱で、6場所以上連続休場したのは過去4人。その中で、復帰場所の白星が最少だった柏戸の9勝に追いついた。柏戸は6場所連続休場後、3度優勝した実績があるだけに、名実共に復活に近づいた。

今日13日目は最も燃える相手、白鵬と対戦する。稀勢の里が昨年3月の春場所で昇進後、ともに横綱として対戦するのは初。新横綱場所は稀勢の里が優勝したが白鵬が休場。その後は稀勢の里が8場所連続休場していた。この日、白鵬戦について無言を貫いた本人に代わり、師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)は「横綱だから全力でいける」と真っ向勝負を誓っていた。

7月の名古屋場所前に出稽古先が重なり、三番稽古を行うなど2日連続で胸を合わせた。三番稽古は2勝8敗だったが「目覚めた感じがする」と、9場所ぶりに勝ち越した今場所の足がかりとなった。初対戦から足かけ13年。現在は3連勝中の好敵手との取組が、稀勢の里をもう1段階、復活へ近づける。【高田文太】