大関栃ノ心(30=春日野)が千秋楽を残して、ようやくかど番脱出を果たした。西前頭阿炎(24=錣山)を下手投げで下し、8勝6敗とした。

阿炎のもろ手突きを受け止め、下から押し上げてまわしへ手を伸ばした。左下手で背中越しの深い位置。右も入ってもろ差しになった。もがく阿炎を豪快に下手投げ。支度部屋に戻ると、部屋付きの岩友親方(元前頭木村山)と右手でがっちり握手を交わした。「良かったね。やっと勝ちました」と、安堵(あんど)の表情を見せた。

失った自信を必死に取り戻そうとした。新大関として迎えた先場所6日目、右足親指付け根靱帯(じんたい)損傷で途中休場。けがの影響で、下半身の筋力が低下したまま今場所を迎えた。同部屋の西前頭7枚目栃煌山(31)、東前頭10枚目碧山(32)に対し、鬼気迫る表情で三番稽古に臨んだが、押し込まれて土俵を割る場面が目立った。

「場所前の稽古で自信をなくした。(負けが込んだ場所中も)勝たないといけない、勝たないといけない、という感じだったから良くなかった」

3日目に黒星を喫した翌日の4日目朝と、2連敗で大関陥落が現実味を帯びてきたこの日の朝は、取材対応なし。6勝4敗で迎えた11日目の朝には「やばいね。やばいよ。気持ちが変なんだよ。“負けたら、落ちる”とばかり考えちゃう」と不安を吐露。弱気は色濃く出ていた。

支度部屋では今場所一番の笑顔。ようやく重圧から解き放たれ「ほっとしたね、ほっとした」と繰り返した。