1月の大相撲初場所4日目で引退した、元横綱稀勢の里の荒磯親方(32)が、部屋付き親方として指導者デビューした。所属する田子ノ浦部屋が4日、都内の部屋で稽古を再開。

現役時代と同じ白い稽古まわし姿で稽古場に下り、若い衆にアドバイスを送った。自らも四股などで体を鍛え、春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)に向け、弟弟子の大関高安の稽古相手に名乗りを上げた。

この日から使い始めた真新しい稽古まわしで、荒磯親方は稽古場にいた。木札も「横綱 稀勢の里」から「年寄 荒磯」へと変更。現役時代は稽古中に声を掛けることはなかった、16歳の序ノ口力士に「何度もやっていれば形になってくるから」と、ぶつかり稽古の押し方から胸の出し方まで優しく教えた。序二段力士には身ぶり手ぶりを交えて助言。慣れない行動を随所に織り交ぜ、初々しい部屋付き親方デビューだった。

稽古後は、これまた公の場では見せたことのなかったジーンズ姿で報道陣に対応した。「みんな強くなってほしい。少しでも、やる気が出るように後押ししたい」と、笑顔を交えて意気込みを語った。自身は元鳴戸親方(元横綱隆の里)の厳しい稽古で強くなった。だが「現代っ子だから現代風にやるしかない」と笑い、スタイル踏襲よりも臨機応変に対応する考えだ。

若い衆への指導と並行して自身の体も鍛えていた。四股で下半身、器具を使って上半身を強化。「大関がいるから。体をつくらないとケガしちゃうから」と、高安の稽古相手に名乗り。これには高安も「ありがたいこと。しっかり準備します」と歓迎した。引退時の188センチ、177キロの体は変わらず貫禄十分。9月29日の引退相撲まで「維持していこうかな」と語った。

現在、高安に次ぐ番付の力士は、三段目と開きがある。高安を横綱にしたいか問われると「もちろん、そうですし、各力士を1つずつ上げていきたい。幕下がいると部屋が活気づく」と力説。十両や幕下が1人もいない現状打破にも意欲的だった。【高田文太】